2016 Fiscal Year Research-status Report
嗅覚神経系の3つの階層におけるニューロン総数と嗅覚機能の定量解析
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15K06737
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
森泉 哲次 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (70157874)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福島 菜奈恵 信州大学, 学術研究院医学系, 准教授 (90334888)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 嗅覚神経系 / 嗅球 / 外側嗅索 / 嗅皮質 / 機能回復 / 再生軸索線維 / 定量解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
<はじめに> 研究課題である外側嗅索(LOT)の切断実験を行っている際に、LOTの再生に関して(1)再生軸索線維による機能回復は切断後いつおこるか(2)機能回復がおこるには再生軸索線維がどれくらい必要であるかという神経科学にとって重要な課題に解答が得られたので以下に記載する。<方法と結果>(1)生後2日(P2)の新生児ラットの左LOTを切断した。哺乳期のラットは嗅覚がないと哺乳できないため、LOT切断ラットの機能再生については、胃の中に存在する哺乳したミルクの有無で判定した。その結果、P2で左LOTを切断しP11で右嗅球を吸引除去したラット(n=22)の完全切断例(n=13)において胃内ミルクを認めた時期は、P11が0匹(0%)、P12が9 匹(69%)、P13が4匹(31%)であった。(2)P2ラットの左LOTを切断し、P5で順行性の神経トレーサーであるBDAを両側嗅球に注入した。その結果、LOTの完全切断例において、機能的にまだ再生していない時期(P10, n=5)と機能再生が確認された時期(P12, n=6)の両方で、切断部より尾側でBDA陽性の再生線維が検出された。P10におけるBDA陽性部位の面積 (μm2)と密度 (density index) は、LOT切断側では191,000と0.13で、非切断側では866,000と0.34であった。P12におけるBDA陽性部位の面積 (μm2)と密度 (density index)は、LOT切断側では434,000と0.21で、非切断側では1,105,000と0.35であった。<結論>(1)LOTを切断された新生児ラットの嗅覚は、切断後10日で回復することが明らかになった。(2)LOTを切断された新生児ラットの嗅覚機能回復には、嗅結節レベルにおいて、面積では正常の約40%、密度では正常の約60%の再生線維が必要であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
嗅覚機能に必要な大脳皮質の最小サイズを定量化する研究テーマは、新生児ラットの大脳皮質を様々な程度に吸引除去し、1か月後に嗅覚機能を検査し、嗅覚識別能を有するラットと嗅覚識別能を失ったラットの2群に実験動物を分類することができ、当初計画した実験はすべて終了している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はラット脳の連続組織標本を作成し、残存する嗅覚に関係した大脳皮質(嗅皮質)をニューロンマーカーのNeuNを用いて定量評価し、嗅覚識別能の有無と残存嗅皮質量の相関を調べて、嗅覚機能に必要な大脳皮質の最小サイズを決定したい。
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Research Products
(1 results)