2015 Fiscal Year Research-status Report
異常な細胞小器官から解き明かす脊髄小脳変性症15/16の発症機構
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15K06761
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
久恒 智博 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 研究員 (10321803)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | カルシウム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はタイプ1型IP3受容体(IP3R1)の小脳・脳幹特異的欠損マウス(Wnt1-Cre:Itpr1flox/floxマウス)を用いてプルキンエ細胞の経時的形態変化を明らかにし、SCA15/16の発症メカニズムを明らかにすることを目的とした。 本年度は、15ヶ月齢のWnt1-Cre:Itpr1flox/floxマウスの小脳組織の電子顕微鏡による観察をおこなった。その結果、平行繊維末端の肥大と顆粒の蓄積がWnt1-Cre:Itpr1flox/floxにみられることを明らかにした。この平行繊維末端の肥大と顆粒の蓄積は、プルキンエ細胞特異的IP3R1欠損マウスL7-Cre:Itpr1 flox/floxにはみられなかった為、顆粒細胞に発現するIP3R1の関与が強く示唆された。さらに、Wnt1-Cre:Itpr1 flox/floxマウスのプルキンエ細胞に、細胞小器官の異常が現れていないか調べた結果、この週齢では野生型と比べて顕著な違いを見出すことができなかった。また15週齢のWnt1-Cre:Itpr1 flox/floxマウスでは変性脱落したプルキンエ細胞も確認出来なかった。 一方、本年度はヒト脊髄小脳変性症の患者に新たに見つかったIP3R1の点変異に関する実験もおこなった。この家系の患者は、IP3R1遺伝子の細胞質に存在する領域に点変異をもっていることが明らかになった。この点変異体を作成し、IP3受容体を持たないR23-11細胞に発現させ、M4刺激に対するカルシウム動態を測定した所、野生型のカルシウム動態に対して、変異型のIP3R1は異常なカルシウム動態を示す事が明らかになった。今後は、IP3に対するアフィニテイなどを明らかにしていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
15ヶ月齢Wnt1-Cre:Itpr1 flox/floxマウスのプルキンエ細胞においてカルビンデインの欠失はみられているものの、電顕レベルでのプルキンエ細胞の変性および脱落は確認出来ていない。ヒト疾患SCA15/16は発症が遅いという特徴をもつ為、マウスのプルキンエ細胞の変性脱落にさらに長い期間を要する可能性も考えられる。マウスをより高週齢にすることを進める一方、今後はWnt1-Cre:Itpr1 flox/floxマウスのプルキンエ細胞において、IP3受容体からのカルシウムにより活性化される標的分子のシグナル異常を積極的に明らかにしていくことが必要と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
近年SCA関連遺伝子が次々と明らかになり、PolyQ型Ataxin2, 3がIP3R1に結合してカルシウム動態を異常にすることが報告された。また、PKCガンマやTRPC3がそれぞれSCA14およびSCA41の原因遺伝子と明らかにされ、TRPC3の活性はPKCガンマによるリン酸化により抑制されることも報告されている。これらの分子はIP3R1の下流のターゲットとなる可能性があるため、今後はWnt1-Cre:Itpr1 flox/floxマウスのプルキンエ細胞のPKCやTRPC3チャネルの活性異常を明らかにしていくことなどを含め、IP3受容体と他のSCA関連遺伝子の関連を明らかにしていき、IP3受容体のSCA発症における役割を総合的に明らかにしていく。
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Research Products
(3 results)