2016 Fiscal Year Research-status Report
脂質ラフトにおける神経極性決定シグナル伝達制御機構の解明
Project/Area Number |
15K06770
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
本多 敦子 新潟大学, 医歯学総合研究科, 特任助教 (40467072)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 脂質ラフト / 4回膜貫通タンパク質 / 神経極性 / シグナル伝達 / トランスデューサー / ラミニン / 脳発生 / GPM6a |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、①M6タンパク質が形成するタンパク質複合体の神経極性決定における役割と発生脳における重要性を明らかにし、さらに②脂質ラフトにおけるM6aタンパク質複合体の局在化の分子機構とその生理的意義を解明することを目的とし、本年度では後者②について明らかにした。 脂質ラフトプローブEGFP-D4 (D4)を用いて生細胞における脂質ラフトを可視化し、mCherry標識の野生型又はパルミトイル化修飾部位変異M6aを発現させた株細胞および神経細胞にて、M6aと脂質ラフトの局在の関係性を解析した。その結果、M6aは自らのパルミトイル化修飾を介して脂質ラフトと共局在し、両者が形質膜上で同期して集積することを明らかにした。神経突起形成前(ステージ1)の神経細胞では、細胞外基質ラミニンの刺激によりM6aとD4は共に非対称性に集積、集積した膜領域より神経突起が突出し、形成された成長円錐にM6aとD4は共局在した。これらは、M6aノックアウト(KO)神経細胞では生じないことから、ラミニンによるM6aの集積により脂質ラフトのクラスタが生じ、その膜領域で軸索形成が誘導されることを明らかにした。 M6aとD4が局在化する膜領域には、M6aの下流シグナル分子としてこれまで同定したRufy3やRap2, STEFが集積したが、M6a KO神経細胞では、これらの集積が生じないことから、M6aの集積は脂質ラフトのクラスタリングだけでなく、同膜領域でのシグナル分子の集積も誘導することを明らかにした。 以上より、M6aは細胞外のラミニンシグナルを受けて神経細胞の形質膜上の脂質ラフトを制御し、そこにシグナル分子を集積させて細胞内シグナル伝達を制御する「トランスデューサー」としての役割を担うことを明らかにし、その役割の1つにステージ1細胞におけるラミニンによる急速な神経極性決定があることを証明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度までに、研究開始時に計画していた2項目①M6タンパク質が形成するタンパク質複合体の神経極性決定における役割と発生脳における重要性の解明と、②脂質ラフトにおけるM6aタンパク質複合体の局在化の分子機構とその生理的意義の解明についての研究結果が得られ、次年度計画していた上記研究成果の論文発表を本年度中におこなうことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、M6aの脂質ラフト制御を介したトランスデューサーとしての生理的役割と、脳形成過程の神経極性決定におけるその重要性を明らかにすることができたが、M6aを軸とした脂質ラフトにおける個々の分子間制御機構の詳細については、まだ解明していない。今後は、生化学的解析とイメージングを中心に、これらの分子間制御機構を明らかにする。
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Remarks |
The Journal of Neuroscience vol.37(15), April 12, 2017 のcoverに掲載されました http://www.jneurosci.org/content/37/15.cover-expansion
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Research Products
(4 results)