2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K06775
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
斎藤 祐見子 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (00215568)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | GPCR / 1次繊毛 / 摂食 / うつ不安 |
Outline of Annual Research Achievements |
中枢性メラニン凝集ホルモン (MCH) 受容体MCHR1は摂食・情動に関与するGPCRであり、齧歯類ではMCHに対する唯一の受容体である。脳領域において、MCHR1は細胞膜ではなく、特殊な細胞小器官である1次繊毛膜に選択的に局在すると言われている。1次繊毛機能の攪乱は肥満を含む繊毛病という多様な疾患の原因となること、MCHR1は摂食調節に深く関連することから、我々は繊毛局在型MCHR1について研究を開始した。昨年度は、モデル細胞を用いることにより、これまで知られていないMCHの生物学的効果、MCHにより1次繊毛長が効果的に縮退する現象を見出した。その縮退開始シグナルは繊毛局在型MCHR1-Gi/o-Akt-GSK3βを介することも明らかにした。本年度は縮退を引き起こす機構について更に解析を進めるとともに、vivoへのアプローチも行った:①in vitro:MCH依存性繊毛縮退が昨年度作成した細胞よりも早く起こるclone 7 (hRPE1-MCHR1:EGFP)を単離した。この系を駆使することで、縮退に伴う細胞骨格の動態及びRNAseqによる縮退関連分子の網羅的解析に着手した。加えて、MCH添加による繊毛縮退時の様子をtime-lapseにより観察した。②in vivo:繊毛という非常に細い領域に存在する蛋白質の検出は通常とは異なったアプローチが必要である。我々は様々なパラメーターを工夫することで、 繊毛局在型MCHR1を明瞭に検出できる免染法を開発した。この手法により、エネルギー代謝変化と繊毛局在型MCHR1の関連性を強く示唆する結果を得た。1次繊毛は非シナプス性のシグナルハブとして注目が高まっている。その変化は樹状突起形成にも大きな影響を及ぼすと言われる。従って、本成果は、1次繊毛という「場」におけるMCHR1の機能及び摂食・情動の機構解明に新しい観点を与えるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1次繊毛局在型MCHR1について独自のツールを作製し、さらに応用範囲の広い重要技術を確立することができた1年だった。この他に、内在性MCHR1や他の繊毛局在型GPCRについて研究の幅を広げるため、ラット海馬神経培養及びラット海馬のスライス培養系も確立した。さらに前例の非常に少ないマウス海馬のスライス培養系(急性スライスとは異なる)も立ち上げつつある。Clone 7を用いたタイムラプスイメージングと細胞骨格系動態に関する論文は現在ほぼ執筆中であり、5月中に論文を投稿する。昨年度確立したMCHR1抑制分子であるRGS8のトランスジェニックマウス(抗うつ表現型)についても、海馬における1次繊毛について興味深いデータを得たため、この結果を加えて、今年中に論文投稿を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
「位置選択的なMCHR1シグナル」として、vitro, vivoの両方において1次繊毛膜に局在するMCH-MCHR1システムを見出した。本年度も引き続き、主に繊毛局在型MCHR1に関する研究を推進する。① MCHR1を介した繊毛縮退機構:1次繊毛という場におけるMCHR1の特異なセンシング機構、すなわち、Gi/o-Akt-GSK3β以降のリレー経路については、RNAseqにより単離した分子群の情報に基づき、gain-of-function, loss-of-function(ゲノム編集オブリガーレ)を活用して、関連分子を絞り込む。さらに、それらの分子について、内在性MCHR1が発現する海馬スライス培養・海馬神経の分散培養系の両方を用いることで、神経系における役割を精査する。② 1次繊毛局在型MCHR1の生理的意義:海馬と線条体において、MCHR1陽性繊毛の動態が絶食負荷に対応して有意に変動することを見出した。そこで、絶食に伴う大脳皮質、扁桃体、側坐核、視床下部におけるMCHR1陽性繊毛の状態についても解析を行う。さらに、高脂肪食の慢性食餌や、慢性ストレス下における脳領域ごとのMCHR1繊毛密度・長さ・形態変化について詳細に解析する。
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Causes of Carryover |
2017年度に実施予定の実験費用を概算したところ、配分額をかなり超えることが予測された。そのため、次年度使用分として582,892円を合算使用としたい。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
合算した予算は、摂食実験用マウス及びラットの購入、特殊エサ購入、海馬スライス用特殊膜、各種抗体、大規模ゲノム編集用の経費、各種esiRNA/siRNAを購入する予定である。
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Research Products
(17 results)