2015 Fiscal Year Research-status Report
多能性遺伝子の発現を指標にしたヒトiPS由来神経幹細胞の腫瘍原性に関する研究
Project/Area Number |
15K06779
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
今井 貴雄 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (10383712)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 神経幹細胞 / ゲノム編集 / Oct4 / iPS細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、ヒトinduced Pluripotent Stem cell (以下 ヒトiPS 細胞)を用いた再生医療の現実化に向けて様々な組織の細胞への分化を可能にする技術の進展がなされている。神経系組織における再生医学においては、マウス、ラット、マーモセットなどのモデル生物系を用いて、脊髄損傷に対する神経幹細胞移植療法研究にiPS 細胞から分化処理を行った神経幹細胞が用いられており、有用性が確認されている。しかし、分化処理を施した神経幹細胞の腫瘍原性が問題になっており、分化プロトコールの改良などに対処しているのが現状である。本研究では、分化誘導して産生された神経幹細胞に特有の腫瘍原性のメカニズムが存在すると考え、この可能性の検証を行うことを目的とした。平成27年度においては、ゲノム改変技術によって、ヒトiPS細胞と ES 細胞由来の神経幹細胞のゲノム上のOct4 遺伝子座に各種レポーター遺伝子または機能性遺伝子を組み込み、挙動を解析するための神経幹細胞を取得するための準備を行った。具体的には、CRISPR/Cas9システムを用いたゲノム編集を行うために、ガイドRNA発現ベクターの作成、多能性遺伝子Oct4のゲノム断片中のストップコドンを外来性挿入遺伝子に置き換えたドナーDNAをそれぞれ環状プラスミドの状態で作成した。ドナーDNAは、相同組み換えが起こった細胞の選択性を高めるためにiPS細胞、神経幹細胞で発現が高まるプロモーターの制御下に薬剤耐性遺伝子を配した。これらの遺伝子を293T細胞へ遺伝子導入し、ゲノム編集が起こることを確認した試験実験の後、ヒトiPS細胞、ヒト神経幹細胞株に対してゲノム編集を行った。これらの細胞を用いて次年度以降の計画研究を行う予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度においては、ゲノム改変技術によって、ヒトiPS細胞と ES 細胞由来の神経幹細胞のゲノム上のOct4 遺伝子座に各種レポーター遺伝子または機能性遺伝子を組み込み、挙動を解析するための細胞株を取得するための準備を行った。過程において、CRISPR/Cas9システムを用いたゲノム編集を前段階実験として293T細胞を使用して試行しゲノム編集が起こることを確認している。これら条件検討の後、ヒトiPS細胞、ヒト神経幹細胞株に対してゲノム編集を行っている。しかし、これらのゲノム改変株の取得に予定よりも時間を要しており、平成27年度中に行う予定であった腫瘍形成検討の実験作業が平成27年度に行えなかった。28年度中に腫瘍形成実験の本作業が行われる予定であるが、当初の予定より2ヶ月程度遅れていると考えられる。総じて、平成28年度内に研究計画の予定に十分追いつけるものと考え、「概ね順調」との判断をした次第である。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に行う研究内容は、申請書記載の研究計画の通りに行う。平成27年度に行う研究の一部が残ってしまったが、平成28年度の計画に影響を及ぼさない範囲であると考えている。
|
Causes of Carryover |
平成27年度の未使用額が直接経費の約12%生じたが、概ね計画通り必要試薬、必要経費として使用できたと考えている。研究代表者が所属する研究室の試薬、物品発注業務担当者が行う複数業者の見積もり取得などのコスト削減への努力により定価ベースでの試算よりも安価に購入できたことが要因だと考えられる。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度において行うべき実験の一部について、平成28年度中に行うことになったため、平成28年度の予算に組み入れて、該当する研究について充当する予定である。
|
Research Products
(1 results)