2016 Fiscal Year Research-status Report
Arctic AβによるCHRNA7を介したアルツハイマー病発症の分子メカニズム
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15K06786
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
澤村 直哉 早稲田大学, ナノ・ライフ創新研究機構, 主任研究員(研究院准教授) (40449351)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 精神・神経疾患の病態と治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢化社会を迎えた現在、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease; AD) は増加する一方であり、その原因・メカニズムの解明と予防・治療法の開発が待ち望まれている。本研究では、家族性AD のうち、アミロイドβタンパク(Amyloid β protein; Aβ)内にアミノ酸残基の変異が見られ、脳実質に変異型Aβの蓄積が見られるArctic 型変異 (E22G) に着目をして研究を行っている。申請者らは先行研究により、Arctic Aβが選択的にCHRNA7 に結合し、その機能を阻害する事を明らかにした。本研究では、Arctic AβがCHRNA7 の関わる神経細胞の機能である、神経細胞死抑制効果と記憶の分子メカニズムを阻害しているという仮説を立て研究を行っている。本年度は昨年度に続きCHRNA7 の神経細胞死抑制効果に対するArctic Aβの影響について検討を行った。まず、神経芽細胞腫である SH-SY5Y 細胞は、細胞死誘導に対する CHRNA7 を介した抵抗性(神経保護作用)を持つことを示した。次にCHRNA7 過剰発現細胞を用いて、神経細胞死を誘導した時にArctic Aβおよびニコチンを投与した際の影響を検証した。この結果、細胞死誘導に対しニコチン投与を行うと細胞死の抑制が観察されたが、Arctic Aβの投与によりこの細胞死抑制効果が阻害された。さらに、その下流シグナルへの影響を調べるため、神経保護作用に関わる様々なシグナルについて検討を行った。このうち、ERK1/2 のみがニコチンで活性化し、Arctic Aβによりこの活性が抑制されることが明らかとなった。最後に、ERK1/2の選択的抑制剤の投与実験を行うことにより、ERK1/2 の活性化がCHRNA7 の神経保護作用に関与していることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Arctic Aβ がCHRAN7 に結合・凝集する事により、その機能である神経細胞死抑制効果と記憶形成のメカニズムへの関与を阻害しているという仮説の検証を目的として研究を進めている。このうち神経細胞死抑制効果への影響として、CHRNA7の活性化からその下流のシグナルについて検証を終了した。これらの知見を基に論文投稿を行い、現在リバイズ中であるため。
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Strategy for Future Research Activity |
Arctic AβのCHRNA7への結合を阻害する物質の探索を行う。また、Arctic AβのCHRNA7 の関与する記憶形成のメカニズムへの影響を明らかにする。内在性のCHRNA7 の機能を調べるため、RNAi やCHRNA7 の阻害剤を用いることにより、Arctic AβのCHRNA7 への結合が生体機能の阻害に重要であるのかを検証する。
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Causes of Carryover |
昨年度最後の請求で使い切りができなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
細胞培養の培地、抗体・試薬の購入に使用する予定。
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Research Products
(2 results)