2016 Fiscal Year Research-status Report
腸管出血性大腸菌感染症に対する再生医療を応用した治療法とワクチンの開発
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15K06801
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
藤井 潤 鳥取大学, 医学部, 教授 (60271441)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森元 聡 九州大学, 薬学研究院, 教授 (60191045)
大原 直也 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (70223930)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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Keywords | EHEC / STEC / Muse cell / Daio / BCG |
Outline of Annual Research Achievements |
2011年富山県を中心に腸管出血性大腸菌 (EHEC)O111による集団食中毒事件が発生した。34名が溶血性尿毒症性症候群 (HUS)を発症し、HUS患者の62%の21名が脳症を起こした。5名が死亡し、死因はすべて脳症によるものであった。このEHEC O111臨床分離株を経口感染させてマウスモデルを作成した。このマウスモデルは、以前O157経口感染マウスモデル(下痢は発症しない)と異なり、下痢を発症することや脳症も起こして死亡することが判明した。6週齢の免疫不全マウス(NOD-SCID)に、EHEC O111を経口感染させて2日後にヒト由来Muse細胞またはnon-Muse細胞を2,5000個、尾静脈から静注した。その結果、Muse細胞を静注された群では、non-Muse細胞を静注した群に比べ、有意に生存期間が長く(p=0.029)、体重の増加を認めた。よってEHEC感染においてMuse細胞が有効であった。EHEC O111経口感染モデルにおいて、抗GFAP抗体を使った免疫染色法により脳アストロサイトが活性化していることを明らかにした。マウスアストロサイトの初代培養を使って、ベロ毒素2型(Stx2)とLipopolysaccharide(LPS)を同時添加して活性化するか、アストロサイトの形態の変化とウェスタンブロット(WB)で調べた。その結果、LPS 1マイクログラム/mlとStx2 10ng/ml同時添加後12時間後にアストとサイトの活性を認めた。 ワクチンは、ベロ毒素2型Bサブユニット(Stx2B)遺伝子のコドンを大腸菌からBCGに変えてBCGに組み込み、Stx2Bの分泌をWBで調べた。その結果、コドンをかえるとStx2Bの分泌量が低下した。 大黄をエタノールで抽出し、溶媒を蒸発してエキスを得た。そのエキスのB2F1感染モデルで効果を調べた結果、効果が無かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
EHEC O111経口感染モデルにおいてMuse細胞を静注した群は、non-Muse細胞を静注した群に比べ、生存期間が有意に延長したことはMuse細胞がEHEC感染に効果を示した初めての報告である。再生医療と感染症の接点があることが判明し、新たな学術領域の創設が可能となった。中枢神経症状と下痢を発症するヒトに近いEHEC O111の経口感染モデルを開発した意味は大きい。なぜなら、今後、脳症だけでなく、下痢についてのメカニズムを調べることができる。このインビトロの系でLPSとStx2によってアストロサイトの活性化を再現できたことは大きい。このインビトロ系で活性化したアストロサイトとMuse細胞を共培養することで、Muse細胞の有する免疫抑制作用因子をマイクロアレイで調べることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
LPS 1マイクログラム/mlとStx2 10ng/ml同時添加後12時間後にアストロサイトの活性を認めので、このインビトロの系にMuse細胞またはnon-Muse細胞を添加して、アストロサイトの活性をMuse細胞が抑制することをアストサイトの形態の変化で調べる。Muse細胞を添加することで、アストロサイトの活性が抑制されれば、Muse細胞だけを磁気ビーズ法で単離し、total RNAを抽出して、マイクロアレイで解析する。マイクロアレイでMuse細胞有するアストロサイトの活性を抑制する免疫抑制因子を特定して、リアルタイムPCRで確認する。 ワクチンは、従来のStx2B分泌型ワクチンを接種後、Stx2Bのタンパク精製を行い、アジュバンドと組み合わせることで、追加免疫を行って強力なワクチンを開発する。 大黄からタンニンフラクションを調製して、それらフラクションの効果をB2F1経口感染マウスモデルで判定する。
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Causes of Carryover |
2016年1月31日に次年度の前倒し金が30万円入金された。 岡山大学が173118円繰り残した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
代表者は18万円は消耗品費に、12万円は日本細菌学会総会旅費に使った。 岡山大学は、残りを繰り残した。
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