2016 Fiscal Year Research-status Report
新規の遺伝子発現制御マウスを用いたInv遺伝子の機能解析
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15K06808
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
渡邉 大介 北里大学, 理学部, 講師 (00260175)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | inv遺伝子 / トランスジェニックマウス / コンディショナルノックアウトマウス / 左右軸形成 / 多発性嚢胞腎 / 繊毛 |
Outline of Annual Research Achievements |
Inv遺伝子変異マウスは、内臓の位置がすべて左右逆転する完全内臓逆位の表現型を表すとともに、多発性嚢胞腎を発症する。また最近、乳児期において発症する家族性若年性ネフロン癆(NPHP2) はヒトのINV遺伝子の変異か原因であることが明らかとなっている。しかしInv遺伝子の左右軸形成や腎臓ならびにその他の組織における生理学的な機能は明らかにされていない。これまでの研究で我々は、Inv蛋白質が細胞の繊毛内で機能していることを証明した。また最近、Inv遺伝子に対するRNAiマウスの作製に成功し報告した(2014, PLoS ONE)。これら結果によりRNAiが生体内においても有効であることが証明されるとともに、Inv遺伝子の新たな機能が示された。しかし従来の研究手法では解析が困難なため、本研究においては組織特異的に特定のレスキュー遺伝子を欠失させる新たな手法(コンディショナルレスキュー法)を考案し研究を進めている。 本法はノックアウトマウスの作製と比べ、短時間かつ低コストで目的とする遺伝子の機能解析が可能となる。またその作製にはES細胞を必要としないことから、マウス以外の動物種の研究にも応用可能な新規の解析技術であり、その応用が期待される。 平成28年度の研究では主に、昨年度構築を完了したベクターを用いて実際にコンディショナルレスキューマウスの作製を行い、導入された遺伝子の発現によりInv遺伝子変異マウスに認められる内臓逆位などの表現型がレスキューされていることを確認した。また得られたマウスより初代培養細胞を樹立し、Cre遺伝子の発現依存的にコンディショナルレスキュー遺伝子の欠失が誘導されることをin vitroの研究において確認した。現在さらにCre遺伝子発現マウスとの間で交配を行い、in vivoにおいても Inv遺伝子が組織特異的に欠失されているかについて解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度構築したコンディショナルレスキューマウス作製べクターをマウス受精卵にマイクロインジェクション法により導入し、9系統のトランスジェニックマウスを得た。次に得られたそれぞれの系統マウスとInv遺伝子変異マウスの間で交配を行い、コンディショナルレスキュー遺伝子を発現し、かつ内在性のInv遺伝子が欠失したinvホモ変異マウスを作製するとともにその表現型を各系統で解析した。その結果9系統のうち3系統においては内臓逆位の表現型が完全にレスキューされていることが観察され、導入されたコンディショナルレスキュー遺伝子が研究計画どおりに生体内においても実際に機能していることが確認された。次に導入されたコンテディショナルレスキュー遺伝子が本研究の目的通りに、Cre遺伝子の存在下で特異的に欠失が誘導出来るかについて調べるため、コンディショナルレスキュー遺伝子を発現するマウスより初代培養繊維芽細胞を樹立し、細胞にCre遺伝子をトランスフェクションした結果、Cre遺伝子の発現依存的にコンでィショナルレスキュー遺伝子の欠失が誘導されることがin vitroの研究において確認された。現在さらに内臓逆位の表現型がレスキューされたコンディショナルレスキューマウスを用いて神経組織特異的にCre遺伝子が活性されるP0-Creマウスとの間で交配を行い、本研究の目的とする、組織特異的なInv遺伝子の欠失がin vivoにおいても誘導出来るかについて解析を進めている。またレスキュー遺伝子の発現と欠失を異なった蛍光蛋白質の発現でモニターすることを可能とする新規のコンディショナルレスキューベクターの構築を終え、その効果をin vitroの研究において確認した。 これらの結果は申請当初の研究計画で期待された研究成果であることから、おおむね研究計画どおり伸展しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度本研究において作製した、Invコンディショナルレスキュー遺伝子の導入により内臓逆位等の表現型が完全にレスキューされたマウスと神経組織特異的にCre遺伝子が活性されるP0-Creマウスとの間で交配を進め、得られたF1マウスの神経ならびに神経以外の各組織におけるInv遺伝子の発現を解析し、本研究の研究計画どおりに神経特異的なInvレスキュー遺伝子の欠失が誘導されているかをin vivoにおいて確認するとともに、神経組織特異的にInv遺伝子が欠失したコンディショナルレスキューマウスの表現型を詳細に解析し、その表現型から未だ明らかにされていないInv遺伝子の神経組織における機能を考察する。またInvコンディショナルレスキューマウス系統より樹立した初代培養繊維芽細胞にCre遺伝子を導入し、Inv遺伝子の欠失が細胞の運動や形態に与える影響を調べ、Inv遺伝子の生理学的な機能をin vitroにおいても解析を進める。 さらにコンディショナルレスキュー遺伝子の発現と欠失の誘導を2色の異なった蛍光蛋白質の発現でモニターすることを可能とする改良型のべクターを用いた新たなコンディショナルレスキューマウスを作製し、その効果を確認する。以上の研究によりノックアウトマウス法を用いない新規の遺伝子機能解析手法であるコンディショナルレスキュー法を確立するとともに、この手法の他の研究分野への応用を目指す。
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Causes of Carryover |
数万円程度の次年度繰り越し予算が生じたが、ほぼ当初計画通りに研究費が使用された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の研究計画どおり、細胞培養ならびにトランスジェニックマウス作製等にかかる物品費として昨年度の繰り越し分の予算を使用する計画である。
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Research Products
(1 results)