2015 Fiscal Year Research-status Report
Dnase1l2の機能解析、及び関節融合に関する研究
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15K06815
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
田村 勝 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソースセンター, 開発研究員 (50370119)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | Dnase1l2 / Dnase family / 遺伝子欠損マウス / ヒト16p13.3微小欠損症 / 関節融合 / 疾患モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
研究開始1年目の本年は、解析結果がその後の解析方針に大きく影響すると考えられる胎仔期の表現型解析を最初に行った。Dnase1l2ノックアウトホモ、およびノックアウトヘテロマウスを用い、Micro-CTによる軟組織形態イメージング解析を行った結果、呼吸器系、心臓循環器系、腎臓、肝臓など主な臓器は正常に形成(正常発生)していることが明らかとなった。また、LacZレポーター遺伝子発現のモニターよるDnase1l2遺伝子発現解析を行った。その結果、上皮系やその他いくつかの組織において特徴的な遺伝子発現が確認された。 次に骨融合の基礎解析を行った。ノックアウトホモ、およびノックアウトヘテロマウスを用いて関節融合の有無を確認した結果、ノックアウトホモのみならず、ノックアウトヘテロマウスにおいても第二指、第三指の指関節融合が確認された。更にその出現頻度はノックアウトホモと比較してノックアウトヘテロマウスでは低く、また表現型も軽度であった。これらの事から、当該表現型はDnase1l2遺伝子量依存的に発症すると考えられた。成体ノックアウトホモ、およびノックアウトヘテロマウスの指関節融合領域のパラフィン切片を作製し、ヘマトキシリン・エオシン染色を行ったところ、関節領域は完全に融合しており、またその融合領域周囲には軟骨組織が存在することが確認出来た。更に当該領域周辺にはリンパ球等免疫系細胞の存在や炎症反応などは観察されなかった。一方、出生直前のE18.5日胚を用いてシアンブルー・アリザリンレッド染色による骨格標本を作製したところ、すでにこの時期には指関節領域の異常が確認された。以上の結果から、Dnase1l2ノックアウトホモ、ノックアウトヘテロマウスに観察される関節融合は、リウマチなどのような免疫異常、自己免疫疾患によるものではなく、胎仔発生時の指関節形成過程の異常が原因であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Dnase1l2ノックアウトマウスは、生殖能力に問題なく、またノックアウトホモでも致死性を示さない。従って解析用サンプルのノックアウトホモ個体作製時にはノックアウトヘテロ同士の交配の他、ノックアウトホモ個体も繁殖に使用出来る。これらの事より、解析サンプル数を確保する際にマウス交配がボトルネックにならなかった。更に解析の結果、ノックアウトヘテロにおいても関節融合が確認され、当該表現型解析にノックアウトヘテロマウスも使用できた。また、各種解析において困難に直面した際には、理研BRC Japan Mouse Clinicの解析担当テクニカルスタッフや解析スペシャリストの助言等を迅速に得る事が出来た。これらのことがスムーズな研究遂行に繋がったと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
解析初年度において、Dnase1l2ノックアウトホモのみならず、ノックアウトヘテロマウスにおいても第二指、第三指の指関節融合が確認された。ノックアウトヘテロマウスにおけるこの表現型および遺伝子量は、ヒト16番染色体短腕DNASE1L2存在領域をヘテロで欠損している16p13.3微小欠損症の関節融合と症状、遺伝子量が一致している。即ち、Dnase1l2 ノックアウトヘテロマウスは、当該染色体異常疾患の良いモデルに成り得ると考えられる。更にその表現型の重篤度、出現頻度はDnase1l2遺伝子量依存的であることから、Dnase1l2 ノックアウトホモマウスは、表現型発症メカニズム解明に大きな力を発揮すると考えられる。解析2年目は、Dnase1l2 ノックアウトヘテロ、ノックアウトホモマウスを駆使して、指発生期の詳細な解析、成体期の網羅的表現型解析(行動、Modified SHIRPA、血算・生化学、剖検解析等)、加齢に伴う表現型解析を行い、Dnase1l2遺伝子機能と16p13.3微小欠損症症状発症メカニズムの解明に取り組む。
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Causes of Carryover |
解析に使用予定であった試薬の国内在庫切れ等により、国内輸入、販売、納品に年度を挟む事象が生じた。その為に次年度使用額、約80千円が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究初年度は、概ね予定通り解析を行う事が出来た。また、得られた解析結果からも研究計画を大幅に変更する様なことや解析自体に困難を要する様な自体には陥ってはいない。従って、解析2年目は、1年目に試薬入手の関係で解析が残った研究と当初から計画していた研究を計画通りに進めたい。
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