2016 Fiscal Year Research-status Report
マウスとヒトの遺伝学的統合によるがん関連遺伝子多型の同定
Project/Area Number |
15K06817
|
Research Institution | Chiba Cancer Center (Research Institute) |
Principal Investigator |
奥村 和弘 千葉県がんセンター(研究所), がんゲノムセンター 腫瘍ゲノム研究室, 研究員 (80584680)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
磯貝 恵理子 千葉県がんセンター(研究所), 発がん研究グループ 実験動物研究室, 上席研究員 (40300917)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 日本野生由来近交系マウス / 多段階皮膚発がん / 発がん感受性/抵抗性遺伝子座 / 副甲状腺ホルモン |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請課題は日本産野生マウス由来近交系MSM/Msを用いた多段階皮膚発がん実験と連鎖解析によりマップした皮膚がん抵抗性/感受性遺伝子座Stmmの原因遺伝子の探索を目的としている。当該年度の成果としては、昨年度までに明らかにした副甲状腺ホルモン(PTH)の皮膚腫瘍抑制機構の一端を明らかにしたので、報告する。PTHは副甲状腺から分泌されるペプチドホルモンであり、ビタミンDと共に生体内カルシウムの恒常性に重要な因子である。一方、皮膚における機能については不明な点が多い。まず血清中のインタクトPTH(iPTH)をMSMとFVB間で比較した結果、カルシウムおよびビタミンD量には差がなく、iPTH量がMSMにおいて5-10倍高いことが明らかとなった。そこで、Pth 周辺領域を含むMSM-BAC クローンをFVB に導入した高iPTH発現型のPthMSM-Tgマウスを作製し、発がん実験を実施した結果、PthMSM-Tgは良性腫瘍数が少なく発がん抵抗性を示した。またPth-KOを用いた発がん実験の結果から血清iPTH量が低いマウスは発がん感受性であることが示された。さらに、iPTH量に変化を与えるSNPを探索した結果、ペプチドホルモンのプロセシングに重要なPro領域にcSNP(Val28Met)が存在した。そこで、このcSNPの効果を培養細胞レベルで解析した結果、PthMSMアレルにおいて細胞内安定性の向上および細胞外分泌量の上昇が確認された。また、分泌されたPTHは、表皮細胞の増殖抑制、細胞内カルシウムの上昇、それに伴う細胞分化を導くことが細胞および個体レベルで明らかとなった。これらの結果から、Pthは、Stmm1bの原因遺伝子のひとつであり、新規の皮膚腫瘍予防マーカーおよび治療ターゲットとなる可能性が考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度はStmm1bの解析に新たな実験として細胞内カルシウム測定の実験系を立ち上げ、実施した。加えて、MSMおよびFVB系統の正常皮膚RNAサンプルを用いたRNA-seqに着手した。すでに、RNA抽出、クオリティーチェック、シークエンシングまで終了し、現在、マッピングのデータを基に解析中である。今後は、候補遺伝子が抽出された場合は、機能解析を含め検討していく。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通りにRNA-sequencingによりStmmの候補遺伝子の探索を継続する。抽出した候補遺伝子については機能解析を細胞および個体レベルで実施する。またStmm1aおよびStmm3については、コンジェニックマウス系統およびノックアウトマウス系統の多段階発がん実験を継続していく。また次年度は本申請課題の最終年度になることから、研究成果の論文化に注力し、発信していく。
|
Causes of Carryover |
当該助成金が生じた状況として、スケジュールがあわず国際学会に参加できなかったこと、また国内学会が東京周辺で行われたことで、予定より旅費をかけずに済んだことによる。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該助成金の使用法として翌年度の物品費に充てる。
|
Research Products
(7 results)