2015 Fiscal Year Research-status Report
血管新生制御因子Vasohibinに結合する蛋白質の同定と作用メカニズムの解明
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15K06821
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 康弘 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (60332277)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | Vasohibin / SVBP / 血管新生 / 癌微小環境 / 癌悪性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はGST pull down法と質量分析により、血管新生制御因子Vasohibinファミリー(VASH1とVASH2)とsmall vasohibin binding protein (SVBP)に特異的に結合する蛋白群の同定を行った。大腸菌を用いてVASHの各機能ドメインと全長SVBPのGST融合蛋白を作製した。全長VASHのGST融合蛋白については、SVBPと共発現することによってVASH-SVBP複合体として安定的に調製することができた。また、ゲル濾過分画によって、VASHとSVBPが1対1の割合で複合体を形成することを新たに見出した。調製した各GST融合蛋白を内皮細胞・癌細胞・ES細胞・マウス脳組織の各細胞抽出液と反応して、GST pull down法によりVASHファミリーとSVBPに結合性を有する蛋白を分離した。SDS-PAGEによる分離後、銀染色によりバンドを検出し質量分析によって結合性蛋白を同定した。その結果、VASHファミリーについては約50種類、SVBPについては約10種類の結合性蛋白を新たに同定することができた。VASHファミリーに結合性を有する可能性のある蛋白には、膜蛋白、ヒートショックタンパク質、カルシウムイオン・cAMPシグナル制御因子、がん微小環境の制御に関わる因子に加え、細胞種・組織特異的な蛋白も確認された。同時に、VASH1とVASH2それぞれに対して特異的に結合する蛋白についても見出すことができた。また、Far-western blotting法によって、SVBPに結合するVASH2の構成ドメインと結合に必要とされるアミノ酸を新たに同定した。 以上の結果は、これまで不明であったVASHファミリーの作用メカニズムを理解するために重要な成果であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度に計画していた実験を遂行し、VASHファミリーについては約50種類、SVBPについては約10種類の結合性蛋白を新たに同定することができた。これらの蛋白中には受容体やシグナル関連因子も含まれていることから、VASHファミリーの作用メカニズムを理解するために非常に重要なデータを得ることができたと考えられる。また、これまで非常に困難だった全長VASH蛋白の精製についても、SVBPとの共発現によってVASH-SVBP複合体として安定的に精製できることを見出すことができた。細胞外においてもVASHとSVBPが複合体を形成していることが知られており、精製VASH-SVBP複合体を用いた解析が可能となり、今後の研究に大きく役立つものと期待できる。また、Far-western blotting法によって、VASHとSVBPの結合に必要なVASHのドメインとアミノ酸も同定することに成功した。いずれも本研究の目的達成のための重要な成果であり、現在まで順調に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)結合性蛋白の機能解析:同定された結合性蛋白の中で特に血管新生・癌細胞の浸潤・転移・幹細胞の機能に深く関わると予想される蛋白に対しては、免疫沈降法やFar Westren Blot法により実際にVASH2やSVBPに結合しうるかどうか調べる。特異的な抗体が手に入らない場合には、cDNAのクローニングを行い、タグと融合した発現ベクターを作製して細胞に強制発現して同様の解析を行う。機能が全く分からない蛋白の場合には、上記と同様にクローニングを進めると共に、siRNAによるノックダウンを行い、細胞の増殖や遊走に対する影響調べる。特に重要であることがわかった蛋白については、CRISPR/CASシステムによってノックアウトした癌細胞・幹細胞を作製して機能解析を行う。また、結合蛋白について更なる情報が必要になってくる場合が想定されるため、平成28年度以降も質量分析による結合蛋白の同定を継続する。 (2)結合に必要なアミノ酸配列の同定とドミナントネガティブ変異体及び阻害ペプチドの作製:実際に結合が確認された蛋白については、VASH2またはSVBPとの結合に必要とされる領域とアミノ酸配列を免疫沈降法やFar Westren Blot法で調べる。結合部位を構成する合成ペプチド或はアミノ酸置換を施したドミナントネガティブ変異体の作製を試み、細胞の増殖や遊走に対する影響や細胞種特異的な性質に対する影響を評価し、阻害効果の有無を確認する。 (3)血管新生と癌悪性化への影響:上記で評価したsiRNA・阻害ペプチド・ドミナントネガティブ変異体を癌細胞移植モデルに処理することによって、腫瘍の大きさ、腫瘍内部の血管新生・リンパ管新生などに対して抑制効果があるかどうかの検証を開始する。
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