2016 Fiscal Year Research-status Report
血管新生制御因子Vasohibinに結合する蛋白質の同定と作用メカニズムの解明
Project/Area Number |
15K06821
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 康弘 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (60332277)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | Vasohibin / 癌微小環境 / 癌関連線維芽細胞 / 血管新生 / 腫瘍間質 / 微小管翻訳後修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
バキュロウイルス発現系によるVasohibinファミリー(VASH1とVASH2)とsmall vasohibin binding protein (SVBP)の組換え蛋白の精製をおこなった。N末端側にGSTとPreScission Protease認識配列を付与した全長ヒトVASH或はSVBPをデザインし、PreScission Proteaseによる切断によってGSTを除去した組換え蛋白を精製した。バキュロウイルス発現系においても全長VASHの精製にはSVBPとの共発現が必要不可欠であり、VASH-SVBP複合体として安定的に調製できることがわかった。調製したVASH2-SVBP複合体を用いて培養細胞に対する影響を解析したところ、内皮細胞の遊走促進活性と癌細胞内におけるシグナル伝達経路の変化を確認した。CRISPR/CAS9によりヒト横紋筋肉腫細胞株RH30(VASH2高発現株)のVASH2欠損させたところ、親株と比して微小管の翻訳後修飾が大きく変化すること見出した。VASHのアミノ酸配列中にSVBPとの結合に必要とされる領域を新たに同定し、変異を導入することで細胞外分泌が抑制されることを確認した。胃癌発症モデルマウスを用いた解析から、VASH2欠損によって癌関連線維芽細胞の腫瘍間質への進展が顕著に抑制されるとともに、癌細胞の増殖や生存に関わるInterleukin-11とEpiregulinの発現が低下することを見出した。同様の発現変化はVASH2を欠損した家族性大腸癌モデルマウスにおいても確認された。 以上の結果は、VASHファミリーの作用メカニズムを理解するために重要な成果である。現在、細胞の遊走活性・微小管の翻訳後修飾・癌関連線維芽細胞の進展に着目して、VASH結合性蛋白の機能解析を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度に計画していた実験を遂行し、VASH2による細胞の遊走活性・微小管の翻訳後修飾に対する影響を新たに見出すことができた。また、バキュロウイルス発現系によってVASH-SVBP複合体を安定的に精製することができるようになり、精製VASH-SVBP複合体を培養細胞に作用させる実験も行うことが可能となった。癌発症モデルマウスを用いたin vivoの解析からは、癌関連線維芽細胞の進展に対する影響を新たに見出し、現在論文投稿の準備を進めている。これらの成果をもとに、VASHおよびSVBP結合性蛋白の機能解析を進めることが可能となり、今後の研究展開の大きなきっかけを掴むことができた。また新たにSVBPの結合に必要なVASHのドメインとアミノ酸も同定することに成功し、ドミナントネガティブ変異体及び阻害ペプチドの作製への応用が期待される。 いずれも本研究の目的達成のための重要な成果であり、現在まで順調に進展していると自己評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)結合性蛋白の同定と機能解析:これまでに同定された結合性蛋白の中で特に癌関連線維芽細胞の進展、微小管の翻訳後修飾、癌細胞の浸潤や転移に関わる分子の同定を進める。前年度に続き、免疫沈降法やFar Westren Blot法によりVASHやSVBPとの結合の有無を確かめる。特異的な抗体が入手できない場合には、cDNAのクローニングを行い、タグと融合した発現ベクターを作製して細胞に強制発現して同様の解析を行うとともに、ウサギポリクローナル抗体作製を試みる。特に重要であることがわかった蛋白については、CRISPR/CASシステムによってノックアウトした細胞を作製して機能解析を行う。VASHファミリーは分泌性蛋白として機能するため、細胞外或は細胞膜上に存在する因子との結合が予想される。そのため、本年度はビオチンリガーゼとVASH或はSVBPの融合蛋白を作製し、結合によりビオチン化された膜蛋白や細胞外因子の単離・同定を行う。 (2)結合に必要なアミノ酸配列の同定とドミナントネガティブ変異体及び阻害ペプチドの作製:前年度と同様に、実際に結合が確認された蛋白については、VASH2またはSVBPとの結合に必要とされる領域とアミノ酸配列を免疫沈降法やFar Westren Blot法で調べる。結合部位を構成する合成ペプチド或はアミノ酸置換を施したドミナントネガティブ変異体の作製を試み、癌関連線維芽細胞の進展、微小管の翻訳後修飾、癌細胞の浸潤に対する影響や細胞種特異的な作用についてin vitro実験系で確認する。 (3)癌微小環境と癌悪性化への影響:上記で評価したsiRNA・阻害ペプチド・ドミナントネガティブ変異体を癌細胞移植・転移モデルに処理することによって、腫瘍の大きさ・腫瘍間質における血管新生・癌関連線維芽細胞の進展・転移などに対して抑制効果があるかどうかの検証を行う。
|
Causes of Carryover |
本年度中に論文を発表する予定でしたが、マウスを用いた実験の進行が予定よりも遅れたために投稿することができませんでした。そのため、論文の英文校正費と投稿料を合わせた金額を繰り越す結果となりました。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
既に必要なデータを加えて論文の作成を終えています。繰り越した分の助成金を使用して、論文の英文校正と投稿を完了する計画です。
|