2015 Fiscal Year Research-status Report
幹細胞老化と個体老化のエピジェネティック制御機構の解明
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15K06835
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
西山 正章 九州大学, 生体防御医学研究所, 助教 (50423562)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 細胞老化 / エピジェネティクス / 発がん / 幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は幹細胞老化と個体老化のエピジェネティック制御機構の解明を目指し、クロマチンリモデリング因子CHD8による幹細胞老化制御メカニズムの全貌を解明すると共に、神経変性疾患やがんなどの加齢関連疾患にこのシステムがどのように関与しているのかを明らかにすることを目的としている。われわれはCHD8が神経幹細胞、間葉系幹細胞および造血幹細胞において高発現していることを明らかにした。最近、自閉症スペクトラム障害の最も有力な原因候補遺伝子としてこのCHD8が同定され、世界中で大きな反響を呼んでいるが、われわれはヒト自閉症患者のCHD8変異を再現したモデルマウスを作製し行動解析を行ったところ、このマウスが自閉症様の行動異常を再現することを確認した。われわれが作製した神経幹細胞特異的なCHD8ノックアウトマウスは神経の発生異常により幼少期に死亡することが明らかになっている。またCHD8ヘテロ欠損マウスは高脂肪食誘導性の肥満に対して抵抗性を示すことが分かっているが、間葉系幹細胞特異的にCHD8を欠損させたマウスは著しい脂肪組織の減少を来すことから、CHD8へテロ欠損マウスの抗肥満表現型は脂肪分化異常が原因であるものと考えられた。さらにCHD8を欠損した造血幹細胞は、老齢マウスの造血幹細胞と類似した異常な増加が観察され、骨髄移植実験における骨髄再構築能力が著しく障害されていることが明らかになった。これらの結果から、CHD8による幹細胞制御システムは神経発生、脂肪分化および造血幹細胞の機能維持において重要な働きを担っていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
神経幹細胞、間葉系幹細胞および造血幹細胞特異的CHD8ノックアウトマウスを作製し、自閉症、肥満症および骨髄機能不全に関して詳細な機能解析を行い、これらの病態にCHD8による幹細胞機能障害が関与していることを明らかにした。また早老モデルとして入手したklothoマウスとCHD8トランスジェニックマウスを交配させることにより、その生存期間が延長することを見出している。これらの知見は当初の研究目的に適っており、順調に達成されつつあると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
神経幹細胞、間葉系幹細胞および造血幹細胞特異的CHD8ノックアウトマウスの解析を進めるとともに、CHD8トランスジェニックマウスがklothoマウスの生存期間を延長するメカニズムを明らかにしていく。プロテオーム、ChIP-SeqおよびRNA-Seq解析によって、幹細胞におけるCHD8の標的遺伝子を網羅的に探索することにより、CHD8による幹細胞老化の制御機構を解明する。またCHD8のプロモーター領域を解析し、遺伝子発現に影響を与えるシス領域を決定すると共に、そこに結合するトランス因子を同定する。さらに様々な発現レベルの発現誘導型トランスジェニックマウスを用いて、種々の幹細胞にCHD8を発現誘導し、幹細胞老化に与える影響を調べる。最終的には、がんを起こさずに個体老化を抑制する発現レベルを決定する。
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Causes of Carryover |
研究用資材の年度内購入ができなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
資材入手後は6月までに当初の研究計画を達成することが出来る。
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