2016 Fiscal Year Research-status Report
間質由来エクソソームの加齢性変化が関与するがん間質の新規発生機序の解明
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15K06841
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
梅津 知宏 東京医科大学, 医学部, 講師 (40385547)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 骨髄間質細胞 / エクソソーム / miRNA / 加齢 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、「正常な間質細胞」と「がん間質細胞」が産生するエクソソームとを比較し、「腫瘍発生を抑制(予防)する正常間質由来エクソソーム」および「腫瘍進展を促進するがん間質由来エクソソーム」を同定することを目的としている。 初年度(H27年度)および次年度(H28年度)は、「正常な間質」の機能に焦点をあて、若年者(19歳、20歳)および高齢者(68歳、72歳)とドナー年齢の異なる健常者由来骨髄間質細胞を用いて解析を行った。初年度には健常者由来骨髄間質細胞が放出するエクソソームからRNAを回収し、TaqMan miRNA arrayを用いてexosomal miRNAの半網羅的解析を行い、ドナー年齢の違いによって(加齢に伴って)骨髄間質細胞が放出するエクソソーム内miRNAのプロファイリングが異なることを明らかにした。 次年度であるH28年度では、この加齢に伴って変化する骨髄間質細胞由来exosomal miRNAのうち、若年者骨髄間質細胞が放出するエクソソームおよびそのexosomal miRNAに注目して解析を進めた。若年者骨髄間質細胞が放出するエクソソームと多発性骨髄腫由来細胞株を混合したマトリゲルをヌードマウス皮下に移植すると、コントロールと比較して顕著に腫瘍血管新生が抑制されていた。さらに、この若年者骨髄間質細胞由来エクソソームに特異的に内包されているmiRNA(miR-340)を、高齢者骨髄間質細胞由来エクソソームに強制的に導入して作成した「改変エクソソーム」を、上記と同様に骨髄腫由来細胞株と混合してマトリゲルに封入し、ヌードマウス皮下に移植すると血管新生が抑制された。このことから若年者骨髄間質細胞が放出するエクソソームおよび内包されるmiRNAには腫瘍進展に関わる血管新生を抑制する効果を有することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
間質細胞の培養系、エクソソームおよび内包miRNAの定量系、解析系などの基本技術が確立していたこと、およびヌードマウスを用いたin vivoモデル系の確立がスムーズに行えたことが実験計画通りに進行している理由と考えられる。研究計画時には、正常間質が放出するエクソソームには腫瘍細胞の増殖を抑制するような予防的効果があると予測していたが、H28年度における若年者骨髄間質細胞由来エクソソームおよびexosomal miRNAの分子生物学的な解析結果から、腫瘍血管新生の抑制を引き金とした腫瘍細胞の増殖制御が引き起こされていることを示唆するデータが得られ、「抗腫瘍血管新生」という当初の予測とは異なる方向性の研究展開が可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度であるH29年度は、H28年度に確立した特異的なmiRNAを人工的に強制発現させた改変型エクソソーム作成技術を用いて、「若年者骨髄間質細胞由来エクソソームの抗腫瘍血管新生効果」を応用したエクソソーム治療の開発を進める。さらに、H28年度後半から進行している「がん間質」およびそれらの放出するエクソソームの解析を進める予定である。実際に、多発性骨髄腫患者由来の骨髄間質細胞は、健常者骨髄間質細胞とは異なるexosomal miRNAプロファイルを有するエクソソームを放出していることが明らかとなっており、その患者由来骨髄間質細胞のエクソソーム放出メカニズムの解明を試みている。
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Causes of Carryover |
論文投稿費として計上していた費用が、投稿雑誌にrejectされたことによる再投稿の時間を要し、研究計画における論文投稿料に差額が生じたことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H29年度内に論文が受理され、次年度繰越金を論文投稿費として使用予定である。また、最終年度においても論文投稿を予定しており、英文校正および論文投稿に経費がかかることが予想され、それらの関連費用に補充することも予定している。
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Research Products
(10 results)