2015 Fiscal Year Research-status Report
骨肉腫転移巣における治療抵抗性獲得の分子機構解明と克服
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15K06845
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Research Institution | Hoshi University |
Principal Investigator |
清水 孝恒 星薬科大学, 薬学部, 准教授 (40407101)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 骨肉腫 / 転移 / 癌微小環境 / 治療抵抗性 |
Outline of Annual Research Achievements |
新規樹立した骨肉腫マウスモデルにおいてAXT細胞を大腿骨内に移植したところ、3週間で原発巣及び肺転移巣の形成がみられた。この系に対して骨肉腫で臨床的に使用される抗癌剤であるドキソルビシン、メソトレキサート、イフォスファミドを計2回投与した。処置群では有意に大腿部原発巣、肺転移巣の縮小を認めたが、依然として肺転移巣では骨肉腫細胞は多数生存していることが確認された。 化学療法に抗して転移巣において腫瘍細胞生存を支持する機構を解明するため、マイクロアレイ解析を施行した。転移巣全体におけるプロファイルを得る目的で、RNAのサンプリングは転移腫瘍細胞、正常細胞を含む肺から行った。対象マウスは、担癌マウスと正常マウスに対し化学療法の施行ありとなしの計4群とした。得られた結果からデータの差し引き(担癌マウスの変化-正常マウスの変化)を行い、転移巣で特異的に起こる変化の抽出を試みた。その結果、担癌マウスのみで2倍以上変化する因子は約2300に絞りこまれた。さらに、正常マウス側で発現の高い因子を除外した結果、候補となる因子は200程度に絞り込まれた。この遺伝子を検索し、血栓の形成に関するFibrinogen、転移への関連が報告されているGpnmbに注目し更なる検討を行うこととした。前者に関しては治療に伴う血栓形成の有無と抗凝固療法の併用による治療効果への影響を解析中である。一方、後者に関しては、発現する細胞種を同定するため、免疫染色を施行した結果、Gpnmb陽性細胞は転移巣の周囲に集積していた。さらに、治療後の肺転移巣からsingle cell suspensionを準備した後、flow cytometryを施行した結果、マクロファージであることが確認された。現在、m-Csf受容体阻害薬の投与によりマクロファージの除去を試み、治療効果への影響を解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
肺転移巣全体における変化のプロファイルを得る目的で、肺全体からRNAを抽出後マイクロアレイ解析を施行し、治療に伴い変化する分子の候補が得られた。現在これらの候補分子の中から治療抵抗性に関与するものが存在するか検討を進めている。申請研究の目的である骨肉腫転移巣における治療抵抗性に関わる因子の解明に関して手掛かりとなる候補が得られたものの、これらの候補に真の責任分子が含まれるか否かに関しては不明である。即ち、これまでに得られたプロファイルを使用してこのまま研究を進めて良いか検討する必要がある。一方で当初の計画であるFACSやレーザーマイクロダイセクション法による腫瘍域、正常域を分けたサンプル抽出は現在まで施行していない。異なるサンプリングから得られたプロファイルと比較をして候補分子の信頼性を確認する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
[肺転移巣の治療前、治療後における変化の解明] これまでに抽出された候補分子を基盤として転移巣の治療抵抗性への関与を引き続き検証してゆく。並行して腫瘍域、正常域を分けたサンプル再抽出を行い、網羅的解析(遺伝子発現プロファイリング、miRNA発現プロファイリング、タンパク質リン酸化アレイ、メタボローム解析)により治療に伴う変化に関する新たなプロファイルを得る。これらを組み合わせることで信頼性の高い候補分子の抽出を目指す。新たに絞り込まれた候補分子に関し責任細胞種を同定し、転移巣において治療に伴い変化する細胞種、非細胞成分(液性因子、細胞外基質)を解明する。さらに、化学療法に伴う上記分子変化をもたらす上流機構、分子(マスターレギュレーター)の検索を、DNAのメチル化プロファイリング、ヒストン修飾などエピジェネティクス修飾変化の網羅的解析(ChIP-seq解析)を施行することにより見出すことも計画している。 [肺転移巣における治療抵抗性分子機構の解明] 腫瘍細胞と密な関係が疑われる細胞はFACSで分取し、共培養系を用いて治療抵抗性への関与を調べる。研究の過程で抽出された分子、シグナル伝達経路に関しては、リコンビナントタンパク、阻害化合物の使用、細胞に対する過剰発現実験、siRNAによるノックダウン実験、使用可能な遺伝子改変マウスを用いることにより、転移巣における治療抵抗性への関与をin vitro、in vivoの実験で検証する。さらに、マウスモデルから得られた知見がヒト骨肉腫においても存在し、機能しうるか普遍性を検討するため、臨床サンプル取得の準備を進める。
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[Journal Article] Synergistic antiproliferative effect of imatinib and adriamycin in platelet-derived growth factor receptor-expressing osteosarcoma cells2015
Author(s)
Yamaguchi SI, Ueki A, Sugihara E, Onishi N, Yaguchi T, Kawakami Y, Horiuchi K, Morioka H, Matsumoto M, Nakamura M, Muto A, Toyama Y, Saya H, Shimizu T
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Journal Title
Cancer Science
Volume: 106
Pages: 875-882
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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