2017 Fiscal Year Research-status Report
ATLの造腫瘍性をコントロールするAKTシグナル:活性化と不均一性の新規制御機構
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15K06848
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Research Institution | Miyagi Prefectural Hospital Organization Miyagi Cancer Center |
Principal Investigator |
山口 壹範 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所), 発がん制御研究部, 上席主任研究員 (80373215)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 成人T細胞白血病 / AKTシグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
難治性の血液腫瘍であるATLは、ウイルスHTLV-1の感染から数十年の潜伏期間を経て発症に至る。発症までには、ウイルス由来のがん遺伝子(Tax、HBZ)以外に宿主側のゲノム、エピゲノム異常の蓄積が必要と考えられているが、その実態は充分には明らかにされていない。申請者はこれまで、AKTシグナルの活性化がATL由来細胞株の造腫瘍性に関与することを明らかにしてきた。昨年度までにこの活性化が、少なくとも一部はAKTシグナルの抑制因子であるINPP5D、PIK3IPの発現低下によりもたらされることを明らかにした。さらにAKTリン酸化制御に関して解析を進め、下記の知見を得た。 1)AKTリン酸化が亢進している高造腫瘍性ATL細胞集団において、Wntシグナルの抑制因子であるNKD2の発現低下が観察された。NKD2の発現をshベクターにより抑制したところ、AKTリン酸化が亢進し、この時造腫瘍性の上昇も観察された。逆にNKD2の強制発現によりAKTリン酸化の低下が観察された。以上の結果から、ATLにおけるAKTリン酸化制御とNKD2を介したWntシグナル制御のクロストークが示唆された。 2)HMG-CoAの阻害剤であるsimvastatin投与によりAKTのリン酸化が亢進することを確認した。simvastatinはRho-dependent kinase (ROCK)の阻害やintegrin発現を抑制することが報告されており、ATLにおいて、これらのシグナル経路がAKTリン酸化に関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
AKTリン酸化の制御システムに関する知見を得ることができたが、AKTリン酸化酵素の同定や、リン酸化抑制に関わるINPP5D、PIK3IPの遺伝子発現制御機構の解明など、リン酸化制御の分子メカニズム解明には至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
1)AKTリン酸化酵素の同定とその制御機構の解明 2)INPP5D、PIK3IP遺伝子発現のエピジェネティック制御機構の解明
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Causes of Carryover |
ATKシグナル分子の遺伝子発現制御機構解明に想定以上の時間がかかった。DNAメチル化解析に関する実験条件(メチル化阻害剤存在下の細胞培養条件など)の検討に時間を必要としたため、エピジェネティック解析の進行が遅れた。次年度は下記の解析を進める。 1)プロモーター部分の詳細なDNAメチル化マップの作成 2)メチル化阻害剤存在下でのAKTシグナル変化の解析 3)AKTリン酸化酵素の同定
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Research Products
(6 results)