2015 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子発現解析データのエビデンスに基づいた腎癌細胞の抗癌剤応答マーカーの探索
Project/Area Number |
15K06854
|
Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
礒野 高敬 滋賀医科大学, 実験実習支援センター, 准教授 (20176259)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 腎癌 / 栄養枯渇耐性 / ミトコンドリア / 活性酸素 / 遺伝子発現解析 / 治療薬ターゲット / 予後予測マーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞外フラックスアナライザーを用いて、グルコース枯渇耐性腎癌細胞株と感受性腎癌細胞株のグルコース代謝と呼吸能について解析したところ、枯渇耐性株は、感受性株に比べて、炭素源のストックが高くグルコース枯渇下でも解糖並びに呼吸が維持できること、並びに、ミトコンドリア内の活性酸素発生量が低く効率よく呼吸によるATP産生を行っていることが解った。更に、糖尿病治療薬のBuformin、脂肪酸のベータ酸化阻害剤のEtomoxirが、枯渇耐性株をグルコース枯渇下でその呼吸能を阻害することにより細胞死に至らしめることが解った。この結果は、栄養枯渇による標準薬物治療に抵抗性の腎癌に対して、これらの薬剤の併用が有効であることを示した。また、ミトコンドリア内の活性酸素発生量を低くする因子として、SOD2の寄与が予想された。グルコース枯渇耐性腎癌細胞株と感受性腎癌細胞株に対する次世代シーケンサーを用いた網羅的な発現解析データ、並びに、臨床腎癌組織の次世代シーケンサーを用いた網羅的な発現解析データにおいて、SOD2遺伝子の発現が、枯渇耐性株、並びに、術後再発して予後不良の腎癌組織で高いことが予備的に示されていたので、標準薬物治療後に再発した患者の予後とSOD2の遺伝子発現とを調べたころ強い相関があり、SOD2の発現が予後予測マーカーとして有用であることを明らかにした。これらの成果は、Scientific Reportsに掲載確定となっている。 グルコース枯渇耐性腎癌細胞株と感受性腎癌細胞株に対する次世代シーケンサーを用いた網羅的な発現解析データから、枯渇耐性株で優位に活性化しているHIF-1-alpha transcription factor networkの解析から、枯渇耐性株では、ヒドロキシル化したHIF-2がその耐性に寄与していることを明らかにした。現在、投稿準備中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グルコース枯渇耐性腎癌細胞株と感受性腎癌細胞株に対する次世代シーケンサーを用いた網羅的な発現解析データ、並びに、臨床腎癌組織の次世代シーケンサーを用いた網羅的な発現解析データを併用し、かつ、腎癌細胞株、並びに、腎癌組織を用いた実験による検証を行うというコンセプトの有効性が、平成27年度の研究で実証された。その中で、腎癌の治療薬候補として、従来から期待されているBuformin、並びに、新たに脂肪酸のベータ酸化阻害剤のEtomoxirを示すことができた。また、腎癌の予後予測マーカーとしてSOD2を示すことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.グルコース枯渇耐性腎癌細胞株と感受性腎癌細胞株に対する次世代シーケンサーを用いた網羅的な発現解析データから得られた結果を成果としてまとめる。第一の成果として、パスウェイ解析から導かれたグルコース枯渇耐性腎癌細胞株ではヒドロキシル化したHIF-2がその耐性に寄与しているという結果を論文にまとめる。
2.SOD2の発現が予後予測マーカーとして臨床応用可能であることを、腎癌組織のパラフィン切片を用いた免疫染色で実証する。
3.グルコース枯渇耐性腎癌細胞株と感受性腎癌細胞株に対する次世代シーケンサーを用いた網羅的な発現解析データ、並びに、臨床腎癌組織の次世代シーケンサーを用いた網羅的な発現解析データの解析を引き続き進めて、新たな腎癌の治療薬のターゲット遺伝子並びに腎癌の予後予測マーカー遺伝子の探索並びに有用性の検証を行う。
|