2015 Fiscal Year Research-status Report
基礎研究解析データに基づく大腸がん新規治療薬のバイオマーカー探索
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15K06860
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
末永 光邦 公益財団法人がん研究会, その他部局等, その他 (70462223)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 効果予測マーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、基礎研究により蓄積されたデータベースと方法論を駆使し、大腸がんの新規薬剤レゴラフェニブおよびTAS-102について、効果予測マーカーを開発する新規手法を試みるものである。レゴラフェニブは、血管新生に関連するキナーゼ (VEGFR1-3, TIE2)、腫瘍微小環境に関連する間質のキナーゼ (PDGFRβ, FGFR)、腫瘍形成に関連するキナーゼ (KIT, RET, BRAF)など、複数のプロテインキナーゼ活性を阻害する薬剤であるが、その耐性獲得機序はまだ解明されていない。現時点でレゴラフェニブに関して有用な結果が得られたので報告する。 標準化学療法で不応または不耐となった進行再発結腸・直腸癌患者を対象としてレゴラフェニブの初回治療開始前、初回治療開始後21日目、治療中止判定時に血液を採取し、血管新生因子や関連因子(ケモカイン等)であるサイトカインをELISAで測定した。抗腫瘍効果とサイトカインの解析においては、治療開始前の血清CCL-5低値と腫瘍縮小に相関が認められた。さらに生存解析でも、CCL5 低値において無増悪生存期間、全生存期間が有意に改善を認めた。一方で、治療開始前と治療開始後のサイトカイン値の変化を解析した結果、VEGF-A(血管内皮増殖因子A)が、治療前より治療開始後21日目で減少した群が増加した群よりも無増悪生存期間が統計学的有意に改善した。生存期間においても改善する傾向を認めた。治療開始前CCL-5値と治療開始21日後のVEGF-Aの変化を組み合わせて解析した結果、治療前CCL5低値でかつ治療開始21日後にVEGF-Aが減少した場合にはさらに無増悪生存期間と全生存期間が延長した。血清CCL5とVEGF-Aは単独または併用でレゴラフェニブ療法の治療前あるいは治療開始早期の効果予測マーカーになりうることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基礎研究ならびにその他の先行研究データをもとにより絞り込んだレゴラフェニブの抗腫瘍効果に関する液性因子の治療前、治療期間から原病増悪に至るまでの測定により、有意に生存期間に影響する因子を抽出するに至ったことから、この成果は臨床的意義の極めて高い結果であるといえる。さらなる研究においてそのメカニズムについての解明が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
さらに症例を蓄積し、得られた結果に対して知見を深める。レゴラフェニブ効果予測ならびに有害事象に関わる因子については、機序解明のために分子生物学的な解析を行う予定である。TAS-102に関しては現在症例蓄積中であり、今後の中間解析に結果が待たれる。
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Causes of Carryover |
候補因子の測定は臨床サンプルを用いるため、患者集積に予想以上に時間を要したことと、有効症例に関しては治療期間延長のため、原病増悪時のサンプル採集までに時間を要したため。また最初の対象薬剤であるレゴラフェニブの効果予測の候補因子の測定結果から、臨床的意義のある効果予測マーカーを比較的早期に発見するに至ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
症例集積による追加検査や得られた効果予測マーカーの抗腫瘍効果における機序解明、確認研究のためのさらなる研究において使用する予定である。
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