2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K06861
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
森 誠一 公益財団法人がん研究会, がん研究所 がんゲノム研究部, 主任研究員 (10334814)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 一喜 公益財団法人がん研究会, 有明病院 婦人科, 医長 (80399451)
杉山 裕子 公益財団法人がん研究会, 有明病院 細胞診断部, 部長 (80322634)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 腹水 / 1細胞解析 / 細胞間相互作用 / パスウェイ解析 / 細胞分散 |
Outline of Annual Research Achievements |
漿液性卵巣がんでは、しばしば悪性腹水(がん細胞を含む腹水)が貯留するが、その発生機構はいまだ不明であり、有効な治療法はない。本研究では、悪性腹水の原因療法開発を目指し、腹水貯留の病態解明のための基礎研究を行う。国内外のこれまでの研究により、悪性腹水産生に重要な接着因子やシグナル伝達系が限定的に明らかになっている。本研究では、患者腹水細胞の1細胞発現解析を行い、その構成細胞であるがん細胞・炎症細胞・中皮細胞の、それぞれの細胞間相互作用ならびに細胞内パスウェイ異常を網羅的に明らかにする。本研究の成果は、原因療法の開発へ直接応用できると期待される。本研究では、悪性腹水貯留の病態解明を目指し、患者腹水細胞の1細胞発現解析を行い、がん細胞・炎症細胞・中皮細胞の、それぞれの細胞間相互作用ならびに細胞内パスウェイ異常、がん 細胞における体細胞変異を網羅的に明らかにする。以下のように研究を進める。 (1)各症例から得られた腹水細胞の1細胞発現解析を行う。(1-a)既存の検体移送・収集システムを活用し、手術ならびに腹水検体を収集・保管する。(1-b)1細胞解析により、細胞種をタイピングし、細胞間相互作用・パスウェイ活性を定量する。(1-c)複数症例の臨床情報と照合し、腹水量や予後など種々の臨床情報との相関解析を行う。(2)多数検体の免疫染色等を行い、腹水貯留に重要な細胞間相互作用やパスウェイを実証する。 平成28年度は、検体収集を精力的に行い、172検体の腹水細胞を収集できた。複数症例の検討により、腹水細胞のうちがん細胞の分散は、腫瘍組織よりも難しいことが判明した。しかし、2症例について1細胞のトランスクリプトーム解析を行うことができた。現在、情報解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
各症例から得られた腹水細胞の1細胞発現解析を行うために、以下の点で進捗があった。 第1に既存の検体収集システムを活用し、手術ならびに腹水検体を収集・保管した。本研究では、良質な臨床情報の付随した新鮮な腹水検体が必要であり、既に整備されている、既存研究のための検体および臨床情報の収集保管システムを活用し、検体および臨床情報を収集・保管した。手術時の残存腫瘍確認の際、および腹水貯留症状の緩和目的で腹腔穿刺を行う際に採取され、細胞診断に必要な量を取った後の残余腹水を利活用する。腫瘍細胞が腹水細胞の30%以上を占める良質な検体を172検体収集することができた。 第2に1細胞のRNA-seqライブラリを作成するため、患者腹水細胞の1細胞分散条件検討を行った。腹水中の漿液性卵巣がん細胞は集塊を作っていることが多いので、がん細胞の分散条件を決定する必要があるが、がん細胞集塊の分散条件(トリプシン、コラゲナーゼ、ヒアルロニダーゼなど細胞分散用酵素とその処理時間)に対する反応性が、各症例においてまちまちであり、ある症例で最適な条件でも別な症例ではうまく分散できないという実験上の問題に直面した。 第3に、2症例については1細胞発現解析のうちライブラリ作成まで行うことができた。現在、情報解析において、1細胞あたりのトランスクリプトの種類と数が十分に得られているか、検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、分散条件の最適化を継続する。分散処理後の細胞のうち、1腹水検体当たり96細胞を用いて、フリューダイム社C1シングルセルmRNAシーケンシングシステムにより、RNA抽出→逆転写→ライブラリ作成前増幅を行う。解析可能な症例数を増やすことに注力する。 1細胞発現解析による細胞種・細胞間相互作用・パスウェイ活性の定量的解析を推進する。以下の情報解析を行う。RNA-seqデータの情報解析前処理として、出力データはCufflinksを用いて発現量に変換後、1症例当たり96細胞分のトランスクリプトームデータを20症例分集積・編纂し、必要に応じ正規化を行う。細胞種タイピングとしてがん細胞のEpCAM, Tリンパ球のCD3など既知のマーカーにより細胞種をタイピングする。必要に応じ、Gene Expression Omnibusなどの公開データベース中にある、種々の正常細胞の発現データを遺伝子署名として活用する。③細胞間相互作用・パスウェイ解析・がん細胞における体細胞変異の検出として、pTARGETなどの細胞内局在予測ツール及びBioGRIDなどのタンパク質間相互作用データベースを組み合わせて利用し、リガンド-受容体関係にある遺伝子を抽出し、各細胞における発現パターンと照合する。パスウェイ解析にはss-GSEAを用いる。COSMICなどのがん体細胞変異データベースを用いて、がん細胞由来mRNA中の体細胞変異を同定する。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Transposon insertional mutagenesis in mice identifies human breast cancer susceptibility genes and signatures for stratification.2017
Author(s)
Chen L, Jenjaroenpun P, Pillai AM, Ivshina AV, Ow GS, Efthimios M, Zhiqun T, Tan TZ, Lee SC, Rogers K, Ward JM, Mori S, Adams DJ, Jenkins NA, Copeland NG, Ban KH, Kuznetsov VA, Thiery JP
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Journal Title
Proc Natl Acad Sci U S A
Volume: 114
Pages: E2215-E2224
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Establishment of a novel histopathological classification of high-grade serous ovarian carcinoma correlated with prognostically distinct gene expression subtypes2016
Author(s)
Murakami, R., Matsumura, N., Mandai, M., Yoshihara, K., Tanabe, H., Nakai, H., Yamanoi, K., Abiko, K., Yoshioka, Y., Hamanishi, J., Yamaguchi, K., Baba, T., Koshiyama, M., Enomoto, T., Okamoto, A., Murphy, S. K., Mori, S., Mikami, Y., Minamiguchi, S., Konishi, I.
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Journal Title
Am. J. Pathol
Volume: 186
Pages: 1103-1113
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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