2015 Fiscal Year Research-status Report
PD-1阻害免疫賦活ナノ粒子と電磁加温を用いた食道癌に対する樹状細胞療法の開発
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15K06867
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
阿久津 泰典 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00375677)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田村 裕 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50263174) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 細胞 / ナノテクノロジー / 温熱療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではLip-PD-1の確立、EPR効果の検証および免疫賦活能の評価、Lip-PD-1による温熱療法と樹状細胞腫瘍内局注免疫療法の増強効果についての検討、抗腫瘍効果の増強のメカニズムを科学的な裏付けを示すこと、PD-1の血中タンパク濃度と食道癌悪性度評価および予後との関連性をを統計学的に検討することである。今回我々は食道癌の免疫逃避機構の一つとして、PD-1およびそのリガンドであるPD-L1、PD-L2の血中濃度を測定し、食道癌の進行とともにこれらのタンパクレベルがどのように変化するかを検討し、PD-1関連タンパクのバイオマーカーとしての可能性について考察した。対象は当科を受診した新規食道癌症例86例。これらの症例の治療前の血漿を用い、ELISA法にて血中のPD-1、PD-L1、PD-L2タンパクを測定し腫瘍の進展度との相関を検討した。深達度別の濃度(T1/T2/T3/T4):PD-1(44。3/39。2/38。7/58。1 pg/ml)、 PD-L1(12。9/16。0/15。2/16。0 pg/ml)、 PD-L2(182。8/183。5/221。0/240。0 pg/ml)であり、PD-L2がもっとも深達度と相関しており、深達度が深いほど血中PD-L2濃度は高かった。また、リンパ節転移個数別の濃度(0個/1-3個/3-6個/7個以上):PD-1(38。0/57。8/46。2/48。8 pg/ml)、 PD-L1(13。0/16。9/14。2/15。9 pg/ml)、 PD-L2(182。1/211。4/219。5/231。0 pg/ml)であり、リンパ節転移個数に関してもPD-L2が最も相関しており、リンパ節転移個数が多いほどPD-L2濃度は高かった。以上をまとめると、PD-1関連タンパクのうち、PD-L2が腫瘍の進展ともっとも相関があった。また、腫瘍の進展に伴い血中PD-L2タンパク濃度も上昇しており、病勢のマーカーとなる可能性がある。一方で、PD-L2タンパクは、食道癌の免疫逃避状態のサロゲートマーカーとして機能している可能性があり、今後、症例の免疫状態との相関関係を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では次の通り3つのステップを計画している。(1)Lip-PD-1の確立、EPR効果の検証および免疫賦活能の評価(2)Lip-PD-1による温熱療法と樹状細胞腫瘍内局注免疫療法の増強効果についての検討(3)抗腫瘍効果の増強のメカニズムを科学的な裏付けを示す。現在まで(1)Lip-PD-1の確立、EPR効果の検証および免疫賦活能の評価を主に行ってきた。まず、PD-1抗体を包埋するリポソームの作成を行った。これは過去に研究室で作成したリポソームと同様の作成技術で作成した。このリポソームの生体内での動態を評価するため、リポソームにICGをマーカーとして付着させ、腫瘍を移植したマウスSCCVIIに上記リポソームを静脈内投与し蛍光カメラにてその動態を観察した。その結果、腫瘍に選択的にリポソームが集積していることが確認できた。 一方、免疫賦活効果であるが、前述のEPR効果で腫瘍に集積した部位に赤外線を用いた温熱療法を加えることでCTL分画の増加が確認され、同様に免疫賦活効果を認めた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、さらに計画を進めてゆく。 (1)Lip-PD-1の確立、EPR効果の検証および免疫賦活能の評価:LiposomeにPD-1/PD-L1/PD-L2抗体を封入したLip-PD-1の製造手法を安定化させ、in vivoの担癌マウスモデルにおけるLip-PD-1のEPR効果を確認する。また封入抗体を単独とした場合、複数抗体のMixtureとしカクテル化した場合等抗体組成別の免疫誘導能を定量化する。(2)Lip-PD-1による温熱療法と樹状細胞腫瘍内局注免疫療法の増強効果についての検討:第二のステップとしてLipo-PD-1と温熱療法の併用、Lipo-PD-1と樹状細胞腫瘍内局注免疫療法の相乗効果をin vitro, in vivoにおいて確認する。その後、Lip-PD-1および温熱療法の両者を併用した樹状細胞腫瘍内局注免疫療法の増強効果について検討する。(3)抗腫瘍効果の増強のメカニズムを科学的な裏付けを示す:最終段階ではLip-PD-1によるCTL、Tregの分画、Th1/Th2バランス、gp96、COX-2、PD-1、それ以外の免疫逃避機構関連分子(IL-6,IL-10,VEGF,TGF-β;,PD-L1,SOCS,MHC-ClassI)の発現変化を定量化し科学的根拠を示す。上記を計画している。
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Causes of Carryover |
今年度の経費が予算額を下回った理由は次のとおりである。 H28年度は抗体を用いた動物実験を多数予定しており、消耗品が高額になることが予想される。したがって、H27年度の消耗品に対する使用額を可能な限り切り詰め、来年度へ繰り越すことにした。 また、解析用コンピューターについては当初購入を計画していたが、研究室内の旧タイプのものでも暫定的に使用することが可能であったため購入を延期した(H28年度には更新する予定)。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H28年度はPD-1抗体を包埋したリポソームを大量に作成する予定である。PD-1抗体は購入価格が比較的高価であるため前年度の予算を意図的に繰り越し使用する予定とした。また、樹状細胞腫瘍内局注免疫療法時に使用する樹状細胞製造におけるサイトカインも同様に高額ではあるが、前年度予算の繰り越しにより余裕を持った使用計画とした。また、解析用コンピュータについては前年度は研究室内の旧タイプのものを暫定的に使用してきたが、老朽化が激しいためH28年度に更新する計画である。
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Research Products
(1 results)