2016 Fiscal Year Research-status Report
腫瘍免疫に基づくアブスコパル効果のメカニズム解明と画期的な腫瘍治療戦略
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15K06870
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
白石 憲史郎 帝京大学, 医学部, 准教授 (40447404)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 恵一 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (80188896) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アブスコパル / 放射線治療 / 腫瘍免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
①放射線治療と腫瘍免疫賦活効果併用に関する基礎的検討 ~Radiation Immunologyの概念の樹立~ 集積が進む腫瘍免疫学的知見では、宿主内免疫監視機構の存在に抗する癌細胞の生体免疫監視機構からのエスケープがほぼ解明されつつある。即ち癌細胞ではMHCクラスI分子が欠失しCD8+CTLによる認識機構から逃避したり、エフェクター分子であるIFN-γに対する反応性を消失したりアポトーシス抵抗性を獲得する。腫瘍内や所属リンパ節では抑制T細胞(CD4+CD25+Treg)が増加して腫瘍に対する生体の免疫応答を抑制する。放射線照射と免疫賦活剤併用により免疫抑制系の環境を克服し、抗腫瘍効果を誘導するため、初年度に引き続き相当数の担癌マウスモデルを用いた緻密な基礎的検討を行った。 ②再現性の高いabscopal effectの誘導と臨床応用照射プロトコールの確立 ①の理論的根拠確立のため、雌性7週齢C57BL/6系およびMHC classの異なるBALB/cマウスの片側皮下にLewis lung carcinoma (3LL) やColon26細胞を(primary tumor)、対側腹部皮下に3LLあるいはColon26/MethAを(secondary tumor)移植後、片側部の腫瘍のみに6Gy(6MeV電子線)照射しケモカインECI301を静脈内投与すると腫瘍特異性および個体特異性に拠らない有意なabscopal effectが確認された。臨床試験を立ち上げるため、至適照射プロトコールとして寡分割大線量およびconventionalな分割照射スケジュールを検討し、一定条件下での実験を行った。 ③①の結果からHMGB1とHSP70が自然免疫系を介したabscopal effect誘導の候補因子であることが明らかになり、研究発展のための薬剤選択につながる礎となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究でkey factorとなる放射線照射は、多様な癌腫の集学的治療の経験豊富な東京大学医学部付属病院放射線科治療部において行われている。初年度は技師・医学物理士らの多大な研究協力を得て順調に実施されたが、2年目の当該年度は研究代表者の異動を伴ったため当初の予定よりも遅れが生じた。一方で本研究において最も重視している臨床試験へとつながる実践的発展のため、東大病院22世紀医療センター免疫細胞治療学(メディネット)講座垣見和宏特任教授に免疫細胞学的観点から随時助言を得ていることは研究推進の原動力となっている。異動した帝京大学医学部においては免疫療法に精通した腫瘍内科医らの助言を仰ぐことが可能となり、適切な研究プロトコールおよびバイオマーカー検索立案の点で予定以上の成果が上がっている。 abscopal effectを背景に説明が成り立つoligometastasis/oligo-recurrenceの実臨床症例の集積も北里大学と共同で肺癌症例を中心に続けている。 そして細胞・分子生物学的処理においては引き続き株式会社エフェクター細胞研究所から免疫賦活剤として質の高いケモカインの提供を受けており、密接な連携先の東京大学大学院医学系研究科社会予防医学講座分子予防医学教室(松島綱治教授)研究員の技術協力の下マクロ及びミクロ視的解析も実施中であり、多部門が緊密に有機的連携をしていることで円滑・効率的に研究が進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
abscopal effectの機序の解明 -腫瘍内浸潤細胞数の変化- アブスコパル効果のeffector cell解明に向けて、フローサイトメーター(FACS)を用いた過去の詳細な細胞生物学的検討(腫瘍内のCD4、CD8陽性T細胞、CD4CD25陽性抑制性T細胞、NK細胞、NKT細胞、gamma-delta T細胞などのエフェクター細胞、CD11c陽性DCやCD11b陽性細胞などの抗原提示細胞(APC)や各種炎症性サイトカイン)で中心的役割を果たしていると予測されたT細胞系の関与メカニズムを確認する。そしてもっとも重要なテーマと位置付けられる、放射線治療や化学療法における抗腫瘍作用機序の免疫学的な一役を担うと提唱されている High mobility group box-1 (HMGB1) およびHeat shock protein-70 (HSP70) タンパクに着目し、ligandであるDC上に発現するToll様受容体 (TLR) 4等の関与を明らかにすべく、nude mouceおよび抗HMGB1抗体および抗HSP70抗体処理下の皮下腫瘍照射実験を行う。 抗腫瘍効果の解除を誘導できれば、アブスコパル効果の本質としてHMGB1等のalarminタンパクが認識するTLR4活性化を介したDCの誘導がrationaleと考えられる。 当該年度に遂行しきれなかった治療後腫瘍組織のRT-PCR解析を追加し、HMGB1およびNK、CD4+/CD8+細胞、γδT細胞、活性型macrophageに発現しシグナル伝達活性化に貢献するタンパクのRNAレベル等を測定し、炎症反応dynamismを掘り下げる。
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Causes of Carryover |
実験マウス照射自体は東京大学医学部付属病院放射線科治療部において効率よく実施され、アブスコパル効果誘導における免疫賦活のための投与ケモカインはエフェクター細胞研究所より引き続き供与いただき資料にかかる費用が当初の予定よりも若干減額されたため。 研究代表者の本年度の異動に伴う研究遂行遅延による実験器具の減弱の影響もあった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度は申請時点予定よりも研究がやや遅延したが、次年度はさらなるエフェクター候補タンパクとペプチド検索およびミクロのレベルでの分子生物学的検討が引き続き行なわれる。 動物実験に多くの時間を割いてきたが、新規図表作成ソフトと統計ソフトも今後購入予定であり、持ち越された研究費を至適に運用する方針である。
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Research Products
(12 results)
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[Journal Article] Impact of Gleason pattern 5 including tertiary pattern 5 on outcomes of salvage treatment for biochemical recurrence in pT2-3N0M0 prostate cancer2016
Author(s)
Taguchi S, Shiraishi K, Fukuhara H, Nakagawa K, Morikawa T, Kakutani S, Takeshima Y, Miyazaki H, Fujimura T, Nakagawa T, Kume H, Homma Y.
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Journal Title
International Journal of Clinical Oncology
Volume: 21
Pages: 975-980
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Optimal timing of salvage radiotherapy for biochemical recurrence after radical prostatectomy: is ultra-early salvage radiotherapy beneficial?2016
Author(s)
Taguchi S, Shiraishi K, Fukuhara H, Nakagawa K, Morikawa T, Naito A, Kakutani S, Takeshima Y, Miyazaki H, Nakagawa T, Fujimura T, Kume H, Homma Y.
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Journal Title
Radiation Oncology
Volume: 11
Pages: 102
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] A clinical trial on hypofractionated whole-breast irradiation after breast-conserving surgery.2017
Author(s)
Nozaki M, Kagami Y, Shibata K, Nakamura Y, Ito Y, Nishimura Y, Kawaguchi Y, Saito Y, Nagata Y, Matsumoto Y, Akimoto T, Nishimura T, Uno T, Tsujino K, Kataoka M, Kodaira T, Shiraishi K, Inoue K, Isohashi F, Hiraoka M, Karasawa K, Izumi S, Sakurai H.
Organizer
ESTRO (European Society for Therapeutic Radiology and Oncology Anniversary) 36.
Int'l Joint Research
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[Presentation] 前立腺全摘後・生化学的再発の救済治療におけるGleasonパターン5の意義2016
Author(s)
田口 慧, 福原 浩, 白石憲史郎, 中川恵一, 森川鉄平, 中川 徹, 藤村哲也, 久米春樹, 本間之夫.
Organizer
第54回日本癌治療学会学術集会, 神奈川, 2016.10.20-22
Place of Presentation
パシフィコ横浜(神奈川、横浜)
Year and Date
2016-10-20 – 2016-10-22
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