2016 Fiscal Year Research-status Report
VHL変異を標的とした悪性胸膜中皮腫の新規治療法開発研究
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15K06878
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
洪 泰浩 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (80426519)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 悪性胸膜中皮腫 / 分子標的治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
悪性中皮腫の約80%において、アスベスト暴露が発がんの原因であるとされており、アスベスト曝露から30-40年間の潜伏期間を経て発症すると考えられている。日本ではアスベストの規制が遅れたこともあり、今後の罹患者数増加が予想されており、2030-2040年頃に発症のピークが訪れると推測されている。一方、悪性中皮腫に対する治療については、手術と薬物療法が選択肢となるが、手術の有効性は確立されていない。また、薬物療法においても効果は十分ではない。そのため、有効な新規治療法の開発に対する期待は非常に大きい。我々はこれまでに悪性胸膜中皮腫症例の一部においてVHL変異を有する症例が存在し、新規治療標的となり得る可能性があることを報告した。 本研究においては、前年度からVHL変異悪性胸膜中皮腫細胞株NCI-H28およびVHL野生型悪性中皮腫細胞株であるNCI-H2052とMSTO-211Hを用いて基礎検討を実施した。その結果、VHL変異によりHIF-1αの恒常的な高発現を認め、HIF-1α阻害剤の処理にて細胞増殖抑制を観察した。これによりVHL変異悪性胸膜中皮腫細胞株NCI-H28がHIF-1α阻害剤に特異的に感受性を示すことを確認した。本年度はさらに、VHL無発現細胞株に野生型VHL及び変異型VHLの導入を実施行い、VHL強制発現細胞株モデルの樹立を行った、。現在はこれらの細胞株において、親株と比較してHIF-1α阻害剤を含めた薬剤感受性に対する影響についての検討を進めている。加えて、本年度に臨床検体を用いての次世代シークエンスの実施のための研究計画書を作成し、倫理委員会にて承認を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.VHL変異悪性胸膜中皮腫細胞株NCI-H28がHIF-1α阻害剤に特異的に感受性を示すことを確認し、VHL変異悪性胸膜中皮腫細胞株NCI-H28においてのみ強いアポトーシス誘導を認めた。同様にウェスタンブロット法においても、アポトーシス誘導の使用となるcleaved PARPの強い誘導をNCI-H28細胞株においてのみ認めた。 2.VHL野生型胸膜中皮腫細胞株MSTO-211H、786-Oにベクターコントロール, VHL WT, VHL L89H, VHL N131Yの遺伝子導入を行い、各種強制発現細胞株の樹立を行った。現在はこれらの細胞株を用いて各種阻害剤に対する感受性の検討を実施中である。 3.HL変異悪性胸膜中皮腫細胞株NCI-H28に対して、HIF-1αのノックダウン細胞株の樹立を実施中である。 4.上記の細胞株を用いることでより特異的な治療標的の探索及び評価を行うとともに、in vivoでの薬剤感受性の検討を計画している。 5.臨床検体を用いての次世代シークエンスの実施のための研究計画書を作成し、倫理委員会にて承認を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に樹立した各種VHL変異導入悪性胸膜中皮腫の細胞株を用いて、VHL/HIF-1α系を阻害する有効なマルチキナーゼ阻害剤の細胞増殖抑制効果についてMTTアッセイにて検討を行う。これらの阻害剤および抗腫瘍薬剤にて処理した時のVHL/HIF-1αシグナル伝達系における変化をウェスタンブロットにて検討を行い、治療効果予測バイオマーカーとなる分子の探索を行う。 加えて、臨床検体を用いての研究についても取り組む。和歌山県立医科大学内科学第三講座に導入されているイルミナ社及びLife Technologies社の次世代シーケンサーを用いて、本研究期間内に新規に診断された症例全例において次世代シーケンシングを実施し、新規治療標的となり得るゲノム異常および、標準治療であるシスプラチン/ペメトレキセド併用療法における効果予測バイオマーカーの探索を行う。本年度にゲノム研究のためのステムの整備はほぼ終えることが出来たため、患者検体を用いての測定を進める予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として、各種VHL変異遺伝子の導入に予定以上に時間がかかったため、予定して検討の一部が来年度以降に実施することになったことが挙げられる。全体の研究計画上は大きな遅れとはならない見込みである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度はその検討に研究費を使用する。加えて、悪性胸膜中皮腫患者からの臨床検体を用いての次世代シークエンシングによる遺伝子変異検出に研究費を使用する予定である。
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Research Products
(14 results)