2015 Fiscal Year Research-status Report
プラズマによる腫瘍特異的細胞死の誘導機序に関する研究
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15K06883
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
相馬 正義 日本大学, 医学部, 教授 (30246855)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 良弘 日本大学, 医学部, 助教 (80206549)
浅井 朋彦 日本大学, 理工学部, 准教授 (00386004)
藤原 恭子 日本大学, 医学部, 助教 (40595708)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | プラズマ / がん / アポトーシス / ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
プラズマ活性化メディウム(PAM)の抗腫瘍効果における活性酸素(ROS)の関与の実証: PAM中に過酸化水素が生成し、これが二次的に細胞内特にミトコンドリア内のROSの蓄積を誘発することが示された。 24ー72時間PAM処理は薬剤耐性の悪性メラノーマ、肺がんならびに骨肉腫細胞に強い細胞死を誘発したが、正常メラノサイトや線維芽細胞は傷害せずその作用は腫瘍特異的であった。また、PAMによる細胞死はカスパーゼ非依存的なアポトーシスによることならびに抗酸化性物質N-アセチルシスチン、スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)、SOD類似化合物MnTBaP、およびカタラーゼで抑制された。これらの化合物の抑制効果はがん種によって異なることから、がん種特異的なROSの細胞死への関与が考えられた
PAMによるミトコンドリア分裂におけるROSの関与の実証とその分子メカニズムの解明:PAMは濃度、時間依存的にミトコンドリアの分裂を惹起した。この反応は、PAM 投与30分後から認められ時間とともに顕著になった。高濃度PAMはミトコンドリアを分裂させるだけではなく凝集させた。ミトコンドリア分裂を制御するダイナミン関連タンパク質1(Drp1)の動態を解析した結果、促進性の616番セリンのリン酸化が時間とともに増大したのに対して、抑制性の637番セリンのリン酸化は1時間後に最大となり以後減少した。その結果、時間経過とともにミトコンドリアの分裂が融合よりも優位となることが示された。このようなミトコンドリア形態やDrp1のリン酸化の変化は正常細胞では認められなかった。さらに過酸化水素投与により腫瘍特異的な細胞死、ミトコンドリアの分裂と凝集、およびDrp1のリン酸化の変化が惹起された。これらの結果からPAMによるミトコンドリア分裂と細胞死にはROSとDrp1のリン酸化が関与することが明らかとなった(これらの結果の一部は、oncotargetにResearch Articlesとして発表した)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の主要な目標はPAMによるミトコンドリアの分裂が細胞死に関与するかどうか、およびそれに関与するROSの同定であった。研究成果として、1.プラズマ照射による過酸化水素生成とそれによる二次的な細胞内ROSの産生、2. ROSの細胞死ならびにミトコンドリア分裂における関与、3. ROSによる腫瘍特異的なDrp1のリン酸化調節を明らかにできたので、今年度の目標はほぼ達成されていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在のところ、作成したPAMは、細胞増殖抑制、細胞死誘発活性を測定しなければその活性の有無がわからない。これらのアッセイには最低 24時間は必要なため、作成したPAMの活性は結果が出た時にはすでに低下している可能性が高い。ROSがPAMによるミトコンドリアの分裂ならびに細胞死誘発のメディエーターであることが明らかにされたので、これをPAMの品質管理に応用する方策を考案する。すなわち、PAM中のROSを迅速、簡便に測定して、その生物活性を予測できるアッセイ系を構築する。
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Research Products
(2 results)