2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K06891
|
Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
右田 敏郎 公益財団法人がん研究会, がん化学療法センター 分子生物治療研究部, 研究員 (20462236)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 自己組織化 / 分化 / がん幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
ES 細胞やiPS細胞は細胞をバラバラにすると死んでいくが、がん細胞は1個から元の細胞集団を形成することができる。よって、がん細胞は細胞認識能力や細胞間の情報交換メカニズムが欠如しており、単細胞でも生存できる能力を有していると考えられる。また、がん細胞は正常の分化した細胞よりも未分化な細胞であり、さらに正常な分化プロセスから脱分化した細胞でもある。よって、がん細胞に分化誘導をかけると分化はするが、正常組織へ分化することはない。よって、がん細胞をもとの正常分化プロセスに戻すためには、細胞間情報伝達の回復と未分化維持機構の抑制が必要と思われる。
細胞が外部環境や細胞自身のプログラムにより自発的に組織化する現象を自己組織化(self-organization) と呼ぶ。自己組織化を制御する遺伝子はまだ明らかではないが、細胞が2次元から3次元構造をとる際に必要な遺伝子と思われる。我々は肝臓がんの細胞株であるHuh-7を用いて、3次元培養を行うと、肝前駆細胞が分化した際に発現が上昇するアルブミンなどの遺伝子の発現が促進されることがわかった。さらに、これらの3次元培養では細胞数が多いほど分化が促進されたことから、3次元培養というなかば強制的な細胞間接着においても細胞分化が促進される可能性がある。
iPS細胞の作製に有効ながん遺伝子であるc-mycの発現を抑制すると、SOX2, Nanog, KLF4などの他の幹細胞性維持に関わる遺伝子の発現上昇が見られた。また、c-mycとKLF4を同時に抑制するとSOX2, Nanogの発現はさらに上昇した。これらの事実は、ES細胞などの多能性幹細胞と同様にがん細胞にも未分化状態を維持するための強固なネットワークが存在する可能性がある。これらの未分化性を維持している遺伝子ネットワークを阻害することにより、がん細胞の分化が促進されるのかどうか検証中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前回の研究テーマである「新規アンドロゲン合成機構」の投稿論文で査読者より追加実験を求められたため、本研究テーマと同時並行で行わざるを得なくなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
2次元培養と3次元培養の比較による網羅的遺伝子発現プロファイルを調べ、自己組織化に関わる遺伝子の候補を同定する。また、遺伝子発現の抑制により、Huh-7の細胞分化を最も促進する遺伝子を同定する。これらの実験から明らかになった遺伝子を同時に抑制し、Huh-7の組織化を確認する。最後に、これらの遺伝子抑制を来す薬剤を検索し、遺伝子発現抑制実験と同様に組織化が生じるかどうかを確認する。
|