2017 Fiscal Year Research-status Report
野生植物集団におけるゲノムの時空間変異:ゲノム生物学と野外生物学の統合
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15K06901
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
森長 真一 日本大学, 生物資源科学部, 助教 (80568262)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | シロイヌナズナ近縁種 / ゲノム / 適応遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
アブラナ科のシロイヌナズナ属植物であるハクサンハタザオを対象に、野生植物集団におけるゲノム変異の網羅的な探索をおこない、野外環境に対する適応進化機構を解析することを試みた。 これまでに、イルミナ社の次世代シーケンサーをもちいて複数個体の全ゲノム解析をおこない、集団構造を考慮した上での環境情報と遺伝子型のゲノムワイド関連解析により、野外環境に対する適応を担う遺伝子の探索をおこなってきた。そして、地理情報システム(GIS)データから日本全国の各採取地点の環境情報を抽出し、得られた適応候補遺伝子のもつ対立遺伝子の分布に基づいて生態ニッチモデリングをおこなった。 採取地情報と環境情報を地理情報システムデータ上で統合し、これまでに開発されてきた気候モデルで推定されている将来の環境を適用することで、将来における各対立遺伝子の分布予測をおこなった。その結果、今後予測されている環境の変化によって、全体として、現在よりも分布が高緯度地域および高標高地域に移動することが示唆された。これらは従来型の種の分布予測の結果と一致していた。ただし、対立遺伝子の違いによって、気候変動後の分布予測が大きく異なることが示された。この結果は、同一種内であっても、集団ごとの適応遺伝子の対立遺伝子組成などによって、環境変化に対する生態学的な応答が異なることを示している。一方、現在の環境を想定したモデル上においては、現在の時点で分布がみられない地域においても、「分布する」と推定されることもあり、モデルのさらなる改良が必要である。また気候変動のみならず、土地開発などの人為的な環境変化をも組み込んだ将来予測をおこなうことで、より現実的な予測へとつなげる必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定通り、全ゲノムシーケンス解析等に基づいて、集団構造を考慮した上でのゲノムワイド関連解析により適応遺伝子の探索をおこない、それに基づいた生態ニッチモデリングから将来環境下での分布予測をおこなった。しかしながら、複数の遺伝子におけるモデリングをおこなうことができず、またモデルのさらなる改良が必要な状態でもある。さらには、他の植物における調査がおこなえず、これらの研究手法を一般化するには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
複数の適応遺伝子に着目し、各地点の環境情報と対立遺伝子のデータを利用して分布モデリングをおこない、環境変化に対する生態学的な応答の予測を試みる。その上で、モデルのさらなる改良を試みる。また、他の植物におけるゲノムワイドな多型解析によって、これまでの研究において確立してきた、ゲノム解析に基づく適応遺伝子の探索を利用した遺伝子レベルにおける将来の環境下での生物の適応予測・絶滅予測手法の一般化を試みる。
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Causes of Carryover |
複数の遺伝子におけるデータ解析が十分におこなえなかった。また、より現実的な予測のために、モデルの改良が必要である。さらには、一般化を目指した他の植物種における解析が十分におこなえなかった。 そこで次年度では、さらなるデータ解析やモデルの改良に必要なハードディスクなどについて、コンピューター関連消耗品費として使用する。また、他の植物種における遺伝子解析に必要な野外調査のための旅費、ゲノムワイドな多型解析に使用する遺伝子解析用消耗品費として使用する。
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Research Products
(5 results)