2018 Fiscal Year Research-status Report
再生医療を目指した神経細胞分化制御における剪断応力の影響
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15K06925
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Research Institution | Tokyo University of Science, Yamaguchi |
Principal Investigator |
広井 賀子 山陽小野田市立山口東京理科大学, 薬学部, 教授 (20548408)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
舟橋 啓 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (70324548)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マイクロ流体デバイス / 神経芽細胞腫 / 液性因子感受性 / 剪断応力 / Wnt3a / 細胞遊走能 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 微小培養環境下での細胞の液性因子感受性について詳細に調べるための細胞培養デバイスを設計, 作成し, 実際に神経系の細胞に分化可能な培養細胞株SH-SY5YにWnt3aシグナルを作用させ, 1マイクロメートルあたり2.5 - 5.0 pM 程度の濃度勾配を細胞が感知できることを突き止めた. これによって, 細胞の運命制御において, 分化する側の細胞と増殖を続ける側の細胞を制御したい場合に, どのような環境を用意することで制御できるか見込みを立てることに成功した. この内容を国際会議で口頭発表した. また, FEBS Open Bioにて学術論文として出版した. [1] Hiraiwa,T. et al. FEBS Open Bio (2018) 8:1920-1935) [2] Hiroi, N. Keio University International Symposium on Advanced Technologies for Mechano-biology and Regenerative Medicine.
2. 神経芽腫細胞の移動能力に対する剪断応力の影響について, 概要環境の剪断応力条件をシステマティックに振りながらテストするデバイスを設計, 作成し, 神経芽腫細胞IMR2を培養し, 剪断応力の影響で細胞の遊走能が上昇し, その仕組みとしてがん細胞の転移・浸潤能を司るMYCN遺伝子が関与している可能性を示した. この研究により, 細胞が自ら移動することによって位置を変える際の制御機構に, 流れの影響があることを示した. この内容をJournal of Royal Society Interfaceにおいて, 学術論文として発表した. [2] Hiraiwa, T. et al. J. R. Soc.Interface (2019) 16: 20180934.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度中までに, 流れのある培養環境下での神経系細胞の運命の制御(分化シグナルを受け取る方向の制御方法の開発)、細胞移動(当初の計画とは異なる方法であるが、位置の制御法の一旦となる)などについて、マイクロ流体デバイスを用いて培養、テストを行い、細胞の左右においてどの程度の濃度差があれば分化誘導シグナルを感知すル事ができるか、また流れが細胞の動態にどのような影響を及ぼし、その背景にはどのような分子機構が見込まれるかを明らかにし、学術論文として公表することに成功した。 今年度は、分化しつつある神経系細胞の突起伸長方向への流れの影響(方向の制御)について定量的な関係を明らかにし、さらに業績をまとめる方針である。
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Strategy for Future Research Activity |
主に剪断応力調整機構を持つマイクロ流体デバイスを引き続き応用して、神経系細胞に分化誘導可能なSH-SY5Y細胞株に対する、流れの細胞分化への影響を調査する。特に、科研費提案時の課題としてあげている3つの項目のうち、分化進行中の神経系細胞の方向の制御法としての流れの応用を追求する目的で、神経細胞突起伸長方向の、流れ方向に対する統計解析を行う。また、可能であれば、ライブセルイメージングで、神経突起の種類(軸索様突起か樹状突起か)を判別して、流れに沿うかどうかの統計解析だけでなく、神経細胞自体の前後を明らかにするため、EB3などの微小管結合因子を細胞に発現させ、そのたんぱく複合体の移動方向分布解析を行う事を計画している。
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Causes of Carryover |
残金が少額となったため、翌年度の資金と合わせて必要な実験用消耗品の購入に当てる事が合理的と考えたため。
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