2015 Fiscal Year Research-status Report
異なる農法によって維持される半自然草地の地域間多様性と維持機構に関する研究
Project/Area Number |
15K06930
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
稲垣 栄洋 静岡大学, 農学部, 教授 (20426448)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 茶草場 / β多様性 / 半自然草地 / 伝統農法 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らは、茶栽培によって維持される「茶草場」という半自然草地の生物多様性が豊かなことを明らかにし、「茶草場」は2013年に世界農業遺産に登録された。この半自然草地を保全する上で「地域内の多様性(α多様性)」だけではなく「地域間の多様性(β多様性)」が重要であるが、茶草場以外の半自然草地を維持する伝統農法は消失の危機にあり、β多様性の減少が危惧される。そこで、本研究では、「①農業形態の異なる半自然草地」と「②管理方法の異なる茶草場」の植物相を比較し、半自然草地の草原性植物群落の成立・維持機構を解明することで、地域ごとの草地管理の多様性がβ多様性の貢献度を評価する。今年度は世界農業遺産に登録された大井川流域を縦のライン(茶草場ライン)、伝統農法が残る山村地域を横のライン(伝統農法ライン)として、茶草場農法の実施状況と、それに伴ってい維持される茶草場の分布、大まかな植生調査を調査した。研究の初めに、茶草場農法やそれに類似した農法によって維持される半自然草地を調査したところ、静岡県浜松市天竜区、藤枝市、静岡市葵区、御殿場市で茶草場が確認された。また、ススキやネザサを主体とする茶草場ではないが、茶への敷き草利用として、焼津市、富士市でも事例を確認した。また、茶以外への利用では、静岡市葵区のシコクビエ栽培での萱(ススキ)の利用や、沼津市在来里芋栽培でのススキ利用、伊東市、南伊豆町の野菜栽培へのススキ利用を確認した。特に島田市と静岡市の山間部1集落ずつを調査地として抽出して、植物社会学的手法ならびにコドラート法による植生調査を行った。現在、大井川右岸にあたる掛川市の茶草場と大井川左岸の島田市の茶草場、大井川上流部の静岡市の茶草場の植物種組成の比較解析を行っているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大むね順調に推移している。ただし、世界農業遺産以外の地域の茶草場や半自然草地が思った以上に発見されたため、今年度はその分布情報の整理に時間を要した。そのため、植生調査の比較解析がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度は、調査地を選定し、詳細な植生調査を行っていく。2017年度については同様に植生調査を行い、年次間変動を調べるとともに、茶草場の位置情報や農法の違いとの関係を相互解析することで、植生の成立要因について明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
航空写真は、すでに所有しているものでカバーできる地域も多かったことから、物品費は当初の予定よりも支出が少なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
茶草場と半自然草地の植物との関係性を明らかにするため、現地から採取した植物の栽培を予定している。栽培試験のための消耗品として活用したい。
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