2016 Fiscal Year Research-status Report
環境の予測可能性と不均一性を組み込んだモンゴルの野生動物保全上の重要地域検出
Project/Area Number |
15K06931
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
伊藤 健彦 鳥取大学, 乾燥地研究センター, 助教 (50403374)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | モンゴル / モウコガゼル / 季節移動 / 衛星追跡 / 生息適地推定 / 保全 / 乾燥地 / 草原生態系 |
Outline of Annual Research Achievements |
モウコガゼルなどの野生哺乳類の大移動がみられるモンゴル草原は世界で最も広大で保存状態が良い草原生態系といわれているが、開発による生息地分断化の影響が危惧されている。本研究は環境条件の地域差を考慮した保全対策の提言を目的とする。そのために、長距離移動動物の移動や生息地選択において重要である環境の不均一性や予測可能性を解析に組み込み、1)移動・生息地選択要因明らかにし、2)生息適地地図や保全上の重要地域地図を作成する。 2015年に分布域北部で追跡を開始したモウコガゼルは明確な移動期と滞在期をもち、秋と春に長距離直線移動をおこなった。この結果は、重要地域や移動開始要因、移動戦略とうさまざまな面で非常に興味深いため、2016年度9月にも同地域でモウコガゼルの捕獲を実施し、追跡個体を拡充した。11月からすべての個体が前年と同方角への直線的長距離移動をし、冬季は南部で滞在した。春の北上も観察されたが、移動時期は前年よりも早い傾向があった。2015年に追跡を開始した個体も含め、4時間ごとの位置データは現在も順調に蓄積されている。また、環境情報の整備も進めている。 過去に追跡したモウコガゼルの行動圏データと、行動圏内の植生量・季節変化・不均一性との関係を解析し、年間行動圏の個体差・地域差が大きいことと、分布域の中では年間を通して植物量が小さい地域で年間行動圏が小さいことを示した論文が出版された(Imai et al. 2017. J. Zool.)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定した地域でのモウコガゼルの捕獲と追跡に成功し、継続的にデータを取得できている。追跡個体の季節移動と複数年の同地域利用は、モウコガゼルの生息地選択にとっての環境条件の影響と重要地域の存在を示唆している。環境情報の整備・解析も進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
整備した環境情報データから、植生と積雪の予測可能性地図を作成し、予測可能性が高い地域の地理的条件を明らかにする。実際のモウコガゼルの利用地点と環境の予測可能性や人間活動の影響を解析し、保全上の重要地域を地図化する。
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