2015 Fiscal Year Research-status Report
ポリコーム複合体PRC2の使い分けによって可能となるエピゲノムパターン
Project/Area Number |
15K06942
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
長尾 恒治 北海道大学, 先端生命科学研究科(研究院), 講師 (60426575)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | エピジェネティクス / ヒストン修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
ポリコーム群複合体PRC2は、遺伝子発現抑制のエピジェネティックマークであるヒストンH3の27番目のリジンのメチル化 (H3K27me3)を行うことで、発生・分化の過程で決定される細胞種特異的な遺伝子の発現パターンの維持を担う。PRC2による発現抑制の代表例には、X染色体の不活性化やHOX遺伝子群の制御が知られている。しかし、PRC2がどのようにして多種多様なゲノム領域を制御することができるのか、H3K27me3とは排他的に存在する別のエピジェネティックマークヒストンH3の9番目のリジンのメチル化 (H3K9me) との関係など、PRC2の制御メカニズムは未だ不明な点が多い。これまでの解析によって、PRC2に含まれる構成因子を明らかにし、構成因子を使い分けることでPRC2はさまざまな複合体として細胞内に存在するという知見を得ている。そこで本年度は昆虫細胞発現系を使った再構成系を確立し、PRC2複合体の成り立ちの全貌を明らかにすることを試みた。その結果、新規因子を含む全14種類のPRC2構成因子に対して、それぞれの間の1対1の結合関係性を明らかにすることができた。さらに変異型、欠失型の構成因子を使いPRC2構成因子それぞれのどの領域が、その結合関係に必要であるかを明らかにした。これによって異なる構成因子からなるPRC2複合体がどのように形成されるのかの知見を得ることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していたPRC2の各構成因子を任意の組み合わせで複数発現させ、部分複合体を再構成する昆虫細胞発現系を構築できた。この系に使うことで各構成因子間の直接的な結合の有無を調べ、PRC2がどのような分子間相互作用で成り立っているかを明らかにできた。さらに部分欠失型の構成因子をつかうことで、どの領域がその結合に必要であるかを明らかにした。また活性に必要なコア複合体の構成因子を共発現させ、できた複合体精製することでヒストンH3を基質にメチル化活性を測定することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
生化学的手法については、これまでに決定したPRC2構成因子間の相互作用に必要な領域に変異を導入していく。これら変異タンパク質を、ヒト細胞で発現させたときに形成されるPRC2複合体を調べることで、ある特定のPRC2複合体のみが形成できないような変異を同定する。これまで得られた構成因子間の相互作用結果を確認するのに役立つだけでなく、PRC2複合体間の機能的違いを明らかにするための材料とすることができる。また異なる構成因子を持つPRC2複合体間で活性がどのように異なるのかを調べる。生物学的な機能解析については、ChIP-seq解析系を用いて、PRC2構成因子がゲノムのどの領域に局在しているのか、それらとPRC2が担うH3K27me修飾部位との関係を明らかにする。またRNA-seqを用いて、各構成因子をノックダウンした際の遺伝子発現の変動を調べ、影響を受ける遺伝子とPRC2構成因子やヒストン修飾との関係を調べていく。
|
Causes of Carryover |
PRC2の機能解析にあたって特定の機能だけ失われた変異体を利用することが有用だと考え、まず生化学的に構成因子間の直接的相互作用を明らかにし、複合体形成に必要な構成因子内のアミノ酸配列を特定するということを行った。そのため最も費用のかかる次世代シーケンサーによる解析を次年度以降にすることにしたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
PRC2のゲノム上での局在を明らかにするためのChIP-seq法や、PRC2各構成因子変異時における遺伝子発現を明らかにするためのRNA-seq法というような次世代シーケンサーを用いた解析に使用する。
|
Research Products
(7 results)
-
[Journal Article] Histone H4 lysine 20 acetylation is associated with gene repression in human cells.2016
Author(s)
Kaimori, J. Y., Maehara, K., Hayashi-Takanaka, Y., Harada, A., Fukuda, M., Yamamoto, S., Ichimaru, N., Umehara, T., Yokoyama, S., Matsuda, R., Ikura, T., Nagao, K., Obuse, C., Nozaki, N., Takahara, S., Takao, T., Ohkawa, Y., Kimura, H., and Isaka, Y.
-
Journal Title
Sci Rep.
Volume: 6
Pages: 24318
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
[Journal Article] Clinical, muscle pathological, and genetic features of Japanese facioscapulohumeral muscular dystrophy 2 (FSHD2) patients with SMCHD1 mutations.2016
Author(s)
Hamanaka, K., Goto, K., Arai, M., Nagao, K., Obuse, C., Noguchi, S., Hayashi, Y. K., Mitsuhashi, S., and Nishino, I.
-
Journal Title
Neuromuscul Disord.
Volume: 26
Pages: 300-308
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-