2016 Fiscal Year Research-status Report
1分子解析技術による真核生物のDNA複製反応解析へのアプローチ
Project/Area Number |
15K06946
|
Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
大重 真彦 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (00451716)
|
Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
|
Keywords | DNA複製 / 複製開始 / 超らせん / DNAポリメラーゼ / DNA合成反応 / T4 DNAリガーゼ / 1分子計測 / 1分子観察 |
Outline of Annual Research Achievements |
負の超らせんがDNA複製反応の開始に与える影響を調査するために、SV40ori-λDNAへ指定した負の超らせん密度下でのSV40ラージT抗原によるDNA複製反応の開始を直接観察した。その結果、高い負の超らせん密度下でSV40ラージT抗原によるDNA複製反応の開始頻度が増加することを確認し、学会および論文として発表した。 DNA鎖を連結する酵素であるT4 DNAリガーゼ(T4 Lig)を蛍光標識し、蛍光T4 Ligによるニック部位認識プロセスが「DNA鎖上に沿ったスライディングによるものか」、「DNA鎖上でのランダムな結合・解離を繰り返した上で偶発的にニックへ結合するのか」等の分子挙動を調査した。その結果、DNAに結合した蛍光T4 Ligがニック部位まで移動した後、一時停止が見られた。この結果からスライディングによってニックを探索している可能性が高いことを明らかにし、学会発表を行った。 連続DNA合成長が短い大腸菌DNA ポリメラーゼ I (pol I)と長いT7 DNA ポリメラーゼ(T7 pol)を例とし、DNA合成反応に伴うRPA-YFP解離による1本鎖領域の長さの変化からDNA合成速度を1分子レベルで決定した。pol I は77 base/sec、T7 pol は132 base/secとなった。さらに、T7 polの合成反応では一時停止を確認し、前後の合成速度に差が見られ、T7 pol分子が入れ替わった可能性があることを明らかにした。また、活性のあるヒトDNAポリメラーゼδ触媒サブユニット(pol δ cat)を調製し、pol δ catとヒトPCNAを用いた1分子レベルでのDNA合成反応速度解析を行った結果、pol δ catのみでは0.96kb/min、PCNA存在下でのヒトpol δ触媒サブユニットでは1.01kb/minとなり、学会発表を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)負の超らせんがDNA複製反応の開始に与える影響を明らかにした。(2)T4 DNAリガーゼ(T4 Lig)を蛍光標識することにより蛍光T4 Ligによるニック部位認識プロセスが「DNA鎖上に沿ったスライディングによる可能性が高いことを明らかにした。(3)DNA合成反応に伴うRPA-YFP解離による1本鎖領域の長さの変化からDNA合成速度を1分子レベルで決定した。pol I は77 base/sec、T7 pol は132 base/secとなり、さらに、T7 polの合成反応では一時停止を確認し、前後の合成速度に差が見られ、T7 pol分子が入れ替わった可能性があることを明らかにした。(4)活性のあるヒトDNAポリメラーゼδ触媒サブユニット(pol δ cat)を調製に成功し、pol δ catとヒトPCNAを用いた1分子レベルでのDNA合成反応速度解析を行った結果、pol δ catのみでは0.96kb/min、PCNA存在下でのヒトpol δ触媒サブユニットでは1.01kb/minと決定できた。以上のことから、おおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、polδのサブユニットであるp68、p50、p12を用いることによりPCNAとの相互作用の1分子レベルでの解析、および、多分子解析で確認されているPCNAによるDNA合成反応の促進を1分子レベルでの解析を行う。 連続DNA合成長が短い大腸菌DNA ポリメラーゼ I (pol I)と長いT7 DNA ポリメラーゼ(T7 pol)の結果より、連続DNA合成長の違いにより各種DNAポリメラーゼの挙動変化を観察出来る可能性が出てきた。性質の異なるDNAポリメラーゼ種を用いた観察・計測を行なうことにより、挙動変化とDNAポリメラーゼ種の特徴を関連付けられるように、引き続き調査を行う。
|
Causes of Carryover |
連続DNA合成長が短い大腸菌DNA ポリメラーゼ I (pol I)と長いT7 DNA ポリメラーゼ(T7 pol)の解析により、連続DNA合成長の違いにより各種DNAポリメラーゼの挙動変化を観察出来る可能性がある結果を得た。そのため結果の再現性を重視し、DNAポリメラーゼ活性および品質が安定的に入手可能なpol IとT7 polを企業から購入した。そのため、研究室での新たなDNAポリメラーゼ種の遺伝子組み換え実験およびタンパク質調製の費用を先送りしたため次年度に繰り越した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度では、新たに大腸菌DNA ポリメラーゼ I 以外の大腸菌DNAポリメラーゼ種、およびDNAポリメラーゼδのサブユニットタンパク質やDNA複製に関与するDNAポリメラーゼ種(αおよびε)の遺伝子組み換え実験およびタンパク質調製に繰り越した予算を使用する。
|
Research Products
(5 results)