2017 Fiscal Year Research-status Report
HMGA2とポリコーム群タンパク質による神経幹細胞の増殖期制御メカニズムの解明
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15K06947
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岸 雄介 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 講師 (00645236)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 神経幹細胞 / クロマチン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、増殖期神経幹細胞がどのようにしてニューロン分化を開始し、ニューロン分化期へと移行するかについて調べた。その結果、これまでに以下のような結果が得られた。 1, 増殖期神経幹細胞が存在する胎生10日以前は胎児が小さすぎるために遺伝子導入が不可能であったが、本研究において初めて増殖期神経幹細胞への遺伝子導入法を確立した。この手法は、神経幹細胞の運命制御だけでなく、他の組織の発生制御機構の解明にもつながる重要な手法となりうる。現在論文投稿準備中である。 2, 1で確立した技術を用いて様々な遺伝子の機能破壊を行ったところ、増殖期からニューロン分化期への移行を司るクロマチン因子を発見するに至った。この時期の神経幹細胞の運命転換にクロマチン因子が関わることを見出したのはこれが初めてである。現在論文投稿準備中である。 3, 増殖期神経幹細胞がニューロン産生を開始するメカニズムを探索している過程で、あるクロマチン因子の機能解析を行ったところ、ニューロン産生の開始ではなく大脳の領域化に関わることを示唆する結果を得た。当初の神経幹細胞の時期的な運命制御機構とは異なるが、大脳では異なる領域が異なる機能を持つニューロンを産生することから、神経幹細胞の領域ごとの運命制御機構を明らかにする重要な結果である。また、大脳領域化においてこのクロマチン因子が重要な役割を果たすことを見出したのはこれが初めてである。現在論文投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は遺伝子改変マウスを用いて幾つかの遺伝子の神経幹細胞の増殖期からニューロン分化期への移行メカニズムを解明する予定であった。しかしながら、研究実績の概要3に記したように、予期しないクロマチン因子の大脳領域化における役割を明らかにすることができた。 また、当初の目的である増殖期からニューロン分化期への移行メカニズムに関しても、研究実績の概要1に記した全く新しい手法を開発することに成功した。これにより、遺伝子改変マウスを用いた手法よりも飛躍的に多くの遺伝子の機能を解析することに成功している。実際にその手法により、研究実績の概要2に記したように当初は遺伝子改変マウスの交配を待つしかなかった遺伝子の機能を検討でき、全く新しい遺伝子の機能を明らかにすることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、研究実績の概要1-3に記した内容について、以下のようにさらに検討を進め、論文発表につなげる。 1, まだこの手法がどれくらいの発生生物学に用いることができるのかを検討しきれていない。具体的には、遺伝子導入可能な組織を明らかにする。 2, クロマチン因子が神経幹細胞のニューロン産生開始のタイミングを制御することは明らかにしたが、本当に神経幹細胞の運命が変化したかどうかについてはまだ検討中である。増殖や分化能などをさらに検討することにより、神経幹細胞の運命転換に異常が出たかどうかを明らかにする。 3, クロマチン因子がどのようにして大脳領域化を制御するかについてはまだ明らかにできていない。大脳のどの細胞で、どう言った遺伝子の転写を制御することで大脳領域化を制御しているかをさらに明らかにする。
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Causes of Carryover |
ポリコーム群タンパク質ノックアウトマウスを解析していたところ、その表現型が予期せず大脳領域化に関わることがわかったため、計画の見直しとやり直しが必要となった。 そのため翌年度には、当初の神経幹細胞の時期依存的な運命制御の解析をやり直すためのマウス交配と、その後の解析を行う予定である。
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Research Products
(6 results)