2015 Fiscal Year Research-status Report
転写因子E2Fによる細胞増殖とがん化抑制の仕分け機構の解明
Project/Area Number |
15K06957
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
大谷 清 関西学院大学, 理工学部, 教授 (30201974)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | E2F / pRB / 細胞増殖 / がん化抑制 / リン酸化 / 相互作用因子 / ARF / CDK |
Outline of Annual Research Achievements |
転写因子E2Fは、代表的ながん抑制因子pRBの主な標的である。E2Fは、増殖関連遺伝子の発現を誘導することにより細胞増殖に中心的な役割を果たす一方、がん抑制遺伝子を活性化することによりがん化抑制にも重要な役割を担っている。E2Fが如何にして細胞増殖とがん化抑制の相反する細胞運命決定に関わる標的遺伝子の発現を仕分けているのか、詳細は不明である。我々は、この仕分けにE2Fのリン酸化および相互作用因子の違いが関わっている可能性を見出し、両者の違いを検討している。 E2Fファミリーの中でがん化抑制に最も重要なE2F1を過剰発現するとがん抑制遺伝子ARFのプロモーターが活性化されるが、同時にサイクリンD1とCDK4を過剰発現するとその活性化が約30%に抑制された。従って、サイクリンD1/CDK4によるE2F1のリン酸化により、ARFプロモーターの活性化能が抑制される可能性が示唆された。そこで、このリン酸化部位を同定するために、E2F1のCDKによりリン酸化されうるアミノ酸部位45箇所全てのアラニン置換変異体を作製し、サイクリンD1/CDK4による抑制が減弱する変異体をスクリーニングした。現在2箇所の変異体で抑制が減弱する傾向が認められている。 E2F1のDNA結合領域および転写活性化領域以外のN末端領域を欠損させると、ARFプロモーターの活性化能が顕著に低下したことから、E2F1のN末端領域と相互作用し協調的に作用する因子の存在が示唆された。Yeast two-hybrid法を用いて同定したE2F1の新規相互作用因子候補50個が擬陽性でないことのスクリーニングを行い、約8割が真に陽性であることを確認した。これらのうち4個の因子の発現ベクターを作製し、E2F1によるARFプロモーターの活性化に影響を及ぼす因子を検索し、DDX5およびWDR1がその活性化に関与する可能性を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
E2F1のリン酸化を受けうるアミノ酸部位の全ての変異体の作製およびサイクリンD1/CDK4の過剰発現によるARFプロモーター活性化能の抑制に対する影響のスクリーニングが全て終了した。結果、サイクリンD1/CDK4の過剰発現によるARFプロモーター活性化能の抑制が減少する傾向を示す変異部位が2箇所同定された。 E2F1のN末端領域と相互作用する50個の候補因子が擬陽性か否かのスクリーニングが半分以上終了し、約8割が真に陽性であることが確認された。これらのうちから4個を選んで発現ベクターを作製し、E2F1によるARFプロモーター活性化能に影響を及ぼすか否か検討した結果、2個の因子が活性化に関与している可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
おおむね順調に進展しているので、予定通り研究を進める。E2F1のリン酸化部位の変異体に関しては、まず再現性を検討する。その後、リン酸化を模倣した変異体を作製し、サイクリンD1/CDK4の過剰発現をしなくても、ARFプロモーターの活性化能が減弱するか否か検討する。 E2F1のN末端領域の新規相互作用因子の候補に関しては、引き続き擬陽性を除くスクリーニングを行い、まず擬陽性の因子を除く。真に陽性であった因子に関して、既知の情報を参考に可能性の高いものからcDNAクローニングと発現ベクターの作製を行い、E2F1によるARFプロモーターの活性化に影響を及ぼす因子をスクリーニングしていく。
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Research Products
(6 results)