2015 Fiscal Year Research-status Report
光照射固体NMRによる細菌型センサリーロドプシンの光活性構造変化の解明
Project/Area Number |
15K06963
|
Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
内藤 晶 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (80172245)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | センサリーロドプシン / バクテリオロドプシン / イオン輸送 / 信号伝達 / 光照射固体NMR |
Outline of Annual Research Achievements |
細菌型光受容膜タンパク質は物質輸送や信号伝達に重要な役割を果たしている。このなかでレチナールを有するレチナール膜タンパク質は、光照射によるレチナールの光異性化をトリガーとする光反応サイクルを経て、光受容体としての機能が発現する。しかし、このとき生成する光活性中間体とタンパク質の相互作用や構造変化については不明な点が多い。 本課題は光受容膜タンパク質の機能発現に重要な光活性中間体を、新規に開発したin-situ光照射固体NMR法を用いて定常的に捕捉し、タンパク質側の動的構造変化の詳細な解析から、光活性構造変化により生じる信号伝達の分子機構を明らかにすることを目的とする。研究対象として生物が示す感覚応答のモデルとして注目されている光走性の信号を伝達する細菌型光受容膜タンパク質およびイオン輸送膜タンパク質を研究対象とする。この中で、高度好塩菌に存在する光駆動型プロトン輸送活性をもつバクテリオロドプシンと負の光走性を担うセンサリーロドプシンII(SRIIあるいはppR)および正の光走性を担うセンサリーロドプシンI(SRI)を研究対象とした。 本年度は、SRIについて研究を進めた。SRIの発色団レチナールが光異性化を起こし、その構造変化がSRIに伝わる。次に結合トランスデューサー(HtrI)に構造変化が伝わり、さらにリン酸化経路を経て、菌の鞭毛に信号が伝わる。その結果、正の光走性の信号を伝達した場合は菌の反転頻度が下がり、菌は光に向かう正の光走性を示す。一方、負の光走性の信号を伝達した場合、菌の反転頻度が上がり、光から退避する負の光走性を示すことが明らかになった。 さらにバクテリオロドプシンY185F変異体における光反応サイクルについて光照射固体NMRを用いて観測を行った。この結果、CS*中間体やO-中間体のNMR信号の観測に初めて成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではレチナール膜タンパク質がレチナールの異性化に応答して変化するタンパク質の局所動的構造変化を明らかにするため、レチナールの光異性化を観測することを可能にするin-situ光照射固体NMR分光器の開発を最初に行った。 超伝導磁石の外側からLEDにより発生した緑色光を光ファイバーを用いて磁石内に固定しているNMRプローブの上側に光ファイバーを用いて誘導した。次にガラス棒を材料として製作したキャップでジルコニア試料管につめた試料を密閉した。この結果、高速回転する試料管の内部に効率よく光を照射することが可能になった。 このin situ光照射NMR装置を用いて、連続で緑色光をセンサリーロドプシン試料に照射することにより高度好塩菌に存在するセンサリーロドプシンI(SRI)の光活性中間体の捕捉に成功した。この結果、SRIの正の光走性にはM-中間体が関与しており、負の光走性にはP-中間体が関与していることが明らかになった。つぎに、緑色光照射下ではM-中間体が生成し、紫外線照射下ではP-中間体が生成することを明らかにした。この結果、光受容膜タンパク質SRIにおいて波長依存的に活性が変換する分子機構を明らかにすることができた。 光駆動型プロトン輸送活性をもつバクテリオロドプシンのY185F変異体を用いて、光反応サイクルをin-situ光照射固体NMRを用いて測定した。この結果 暗状態ではAT-状態(13-trans, 15-anti)配座と、CS-状態(13-cis, 15-syn)配座を持っており、緑色光照射によりCS-状態はCS*-中間体に変換し、AT-状態はN-(13-cis, 15-anti)および O-中間体(13-trans, 15-anti)に変換することが明らかになった。CS*-中間体およびO-中間体のNMR信号を本研究により初めて観測した。
|
Strategy for Future Research Activity |
SRI-HtrI複合体の系においては大腸菌による大量発現系が確立し、固体NMR測定に必要な同位体標識試料を調製することが可能になっている。本課題では、[20-13C]Ret-SRIを用いてレチナールの光中間体を直接観測することに成功した。この結果を踏まえて、次の段階として[1-13C]Tyrと[15N]Proを導入したSRI試料を調製し、特定の標識アミノ酸の信号を観測するREDORフィルター法を用いて特定のTyr残基単独の13C固体高分解能NMR信号を観測することを試みる。 SRIは緑色光照射によりM-中間体が定常的に捕捉できることが今年度の研究で明らかになった。次年度はREDORフィルター法を用いて、Tyr171単独の13C NMR信号をM-中間体のときに観測し、暗状態と比較してタンパク質側での構造変化を解析する。さらに、青色光を照射してP-中間体に切り替え、同様にTyr171単独の13C NMR信号変化を観測する。この結果から、信号伝達状態のタンパク質側の動的構造変化について解析を行う。 次に負の光走性を示すSRII-pHtrII複合体におけるレチナールの信号を観測することで光中間体の定常的な捕捉を確立する。引き続き中間体生成に応答するタンパク質の動的構造変化の観測を行う。そのため、[1-13C]Tyr,[15N]Pro-SRII/pHtrII複合体試料を調製し、暗順応状態でREDORフィルター法により、Tyr174単独の13C NMR信号を観測する。次に緑色光を照射してM-中間体を生成し、Tyr174の信号の変化を観測する。つづいて暗状態に保ち、長寿命のN-中間体を生成し、Tyr174のNMR信号を観測する。Tyr174は信号伝達に重要な役割を果たしているので、中間体の変化に伴うTyr174の信号変化を観測し、タンパク質側の構造変化を解明する計画である
|
Research Products
(24 results)
-
-
-
-
-
-
[Journal Article] Structure and orientation of antibiotic peptide alamethicin in phospholipid bilayers as revealed by chemical shift oscillation analysis of solid state nuclear magnetic resonance and molecular dynamics simulationfion2015
Author(s)
Takashi Nagao, Daisuke Mishima, Namsrai Javlhalantugs, Jun Wang, Daisuke Ishioka, Kiyonori Yokota, Kazushi, Norisada, Izuru Kawamua, Kazuyoshi, Ueda, Akira Naito
-
Journal Title
Biochim. Biophys. Acta
Volume: 1848
Pages: 2789-2798
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
-
-
-
-
-
[Presentation] Structural changes in the photo-reaction pathways of retinal of bacteriorhodopsin studied by in-situ photo-irradiation solid-state NMR2015
Author(s)
Aris Shigeta, Kyosuke Oshima, Ryota Miyasa, Miyako Horigome, Izuru Kawamura, Takashi Okitsu, Akimori Wada, Satoru Tuzi, Akira Naito
Organizer
2015 International Chemical Congress of Pacific Basin Society (Pacifichem 2015),
Place of Presentation
Honolulu, Hawaii
Year and Date
2015-12-15 – 2015-12-21
Int'l Joint Research
-
-
[Presentation] Photo reaction pathways of sensory rhodopsin as revealed by in-situ photo-irradiation solid-state NMR2015
Author(s)
Yoshiteru Makino, Hiroki Yomoda, Yuya Tomonaga, Tetsurou Hidaka, Izuru Kawamura, Takashi Okitsu, Akimori Wada, Yuki Sudo, Akira Naito
Organizer
2015 International Chemical Congress of Pacific Basin Society (Pacifichem 2015),
Place of Presentation
Honolulu, Hawaii
Year and Date
2015-12-15 – 2015-12-21
Int'l Joint Research
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] Color-discriminating retinal configuration changes of sensory rhodopsin I as revealed by in situ photo-irradiation solid-state NMR2015
Author(s)
Yoshiteru Makino, Hiroki Yomoda,, Yuya Tomonaga, Tetsurou Hidaka, Izuru Kawamura, Takashi Okitsu, Akimori Wada,Yuki Sudo, Akira Naito
Organizer
The 19th International Society of Magnetic Resonance Conference
Place of Presentation
Shanghai, China
Year and Date
2015-08-16 – 2015-08-21
Int'l Joint Research
-
-
[Presentation] Determination of photo-intermediates and photo-reaction pathways of photoreceptor membrane proteins by in-situ photo-irradiation solid-state NMR2015
Author(s)
Akira Naito, Yoshiteru Makino, Hiroki Yomoda, Yuya Tomonaga, Tetsurou Hidaka, Izuru Kawamura, Yuki Sudo, Akimori Wada, Takashi Okitsu, Naoki Kamo
Organizer
The 6th Asia-Pacific NMR Symposium
Place of Presentation
Hong Kong, China
Year and Date
2015-08-13 – 2015-08-15
Int'l Joint Research / Invited
-
-