2016 Fiscal Year Research-status Report
生体を模倣する試験管内アミロイド線維形成反応系の構築と反応機構の解析
Project/Area Number |
15K06965
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
長谷川 一浩 福井大学, 学術研究院医学系部門, 助教 (60324159)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内木 宏延 福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (10227704)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 蛋白質 / 変性とフォールディング / 病理学 / アミロイド / アルツハイマー病 |
Outline of Annual Research Achievements |
難治性疾患であるアミロイド症を引きおこす各種アミロイド線維、特にアルツハイマー病βアミロイド(Aβ)およびβ2-ミクログロブリン(β2-m)アミロイド(透析アミロイド)に焦点を当て、生体内環境を忠実に模倣した試験管内アミロイド線維形成反応系を構築する。これを用いて、生体内のアミロイド線維形成過程での前駆体蛋白質や生体分子等の相互作用を再現して反応機構全体を解明し、治療法の探索に用いることを目的とする。特にAβアミロイドでは生理濃度(nM)に近いAβ蛋白質(ペプチド)モノマー濃度で重合反応を行う開放型反応系を構築し、従来の高濃度の前駆体蛋白質を用いたのではわからない共存蛋白質などとの相互作用を直接解析することを現在の課題としている。 本年度の成果:Aβアミロイド。開放型反応系の基礎構築のために更なる検討を行った。アミロイド線維形成の素過程としては、重合核形成、アミロイド線維伸長および二次核形成がある。複数の形式の開放型反応系を開発し、この3過程のうち、線維伸長反応を正確に測定する方法を検討した。その結果、生理濃度に近い低濃度のAβ蛋白質による線維伸長反応の観察が可能となりつつある。 β2-mアミロイド。アミロイド線維形成が重合核依存性重合機構で行われるとすれば、重合核の形成を誘起する生体物質が存在するはずであり、それを試験管内で探索する反応系の構築を開始した。今回は閉鎖型反応系を用いて検討したが十分な条件を満たすことが難しいことも示唆され、より有効な反応系の構築を模索している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(a) Aβアミロイド線維形成反応系の検討。開放型Aβアミロイド線維形成反応系の基本型の構築;現在構築中の反応系では、反応容器に評価したい蛋白質を固定化した担体を入れ、低濃度のAβ40蛋白質モノマーを連続的に添加する。アミロイド線維に特異的な蛍光物質であるチオフラビンTの蛍光を測定し、線維を定量している。線維伸長測定のための反応系ではAβアミロイド線維(fAβ)を担体に固定して、そこにAβ蛋白質モノマーを連続的に添加し、線維の伸長反応を観察している。本年度は線維伸長測定反応系の更なる改良を行った。低濃度のAβ40蛋白質モノマーを添加する際には濃度と反応量が正比例しない現象が生じる。非特異吸着の回避や測定感度の向上などにより、この問題の解決を試みており、伸長反応のシグナルを正確に測定できるようになりつつある。 (b) β2-mアミロイドの検討。β2-mアミロイドでは、線維形成・伸長の際に前駆体蛋白質β2-mを脂肪酸、リゾリン脂質などにより部分変性する必要がある。昨年度と本年度にAβアミロイドに用いたものと類似した閉鎖型反応系を構築した。しかし、Aβアミロイドとは異なり、生体分子による核形成の誘起を検出するのは難しい可能性が示唆された。そこで、核形成反応などにおける生体分子間相互作用を検出するためには、生体条件を模倣した開放型反応系などを含めた更なる検討が必要であることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
(a) Aβアミロイド線維形成反応系の検討。現在構築中の、脳内での生理濃度に相当する低濃度のAβ蛋白質の重合挙動を観測できる開放型Aβアミロイド線維形成反応系を2通り確立する。すなわち、線維伸長反応のみを測定する方法と、核形成反応と線維伸長反応を含む線維形成反応全体を測定する方法である。これらの反応系を用いて、当初計画を順次検討する。すなわち、①脳脊髄液中の蛋白質群である血清アルブミン(HSA)、トランスサイレチン(TTR)、アポリポ蛋白質E(apoE)等の線維伸長・核形成反応に対する効果を解析する。②低濃度Aβ蛋白質モノマーとHSA、TTR、apoEなどの各種蛋白質の結合と競合するリガンドの検出。③核形成を誘起する因子を探索する;細胞外マトリックス成分などを担体に固定して、Aβ蛋白質モノマーを添加し、核形成を促進し線維を形成させる因子を見出す。④Aβ蛋白質モノマーの凝集を生体内において阻止しうる薬剤の探索等を行う。 (b) β2-mアミロイド線維形成反応系の検討。β2-mアミロイドについて生体を模倣する試験管内アミロイド線維形成反応系を構築する。28年度の検討の結果、開放型反応系が有効であることが示唆されたので検討する。また、沈着局所の細胞外マトリックス成分(プロテオグリカン等) 等が線維形成の相乗効果を示すかを検討し、その結果を反応系に組み込む。これにより、生体内でβ2-mを部分変性させる線維伸長因子の確定を試みる。ついで、この反応系を用いて線維形成を阻害する薬剤を探索する。
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Causes of Carryover |
Aβアミロイド線維形成の開放反応系の構築において、アミロイド線維形成における、重合核形成過程、アミロイド線維伸長過程、二次核形成過程を分別して測定する方法の検討に時間を要した。このため、反応システムの要素である送液システム等の資材設備の購入や、生体内分子間相互作用を検討するための蛋白質等の消耗品の購入を保留していた。これらに相当する経費が残ったものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
Aβアミロイド線維形成の開放反応系の構築において、担体、Aβペプチド、共存蛋白質、反応装置等の購入に用いる。また、構築した反応系を用いたAβ蛋白質と共存蛋白質や薬剤の相互作用を解析するため、当該の試薬の購入等に用いる。また、β2-mアミロイドについて試験管内アミロイド線維形成反応系の部品や、評価する蛋白質等の消耗品の購入に用いる。 また、当該研究結果の学会発表の旅費として、また、当該研究成果を論文として発表する際の掲載料として使用する。
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Research Products
(3 results)
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[Presentation] C反応性蛋白質と血清アミロイドP成分の多面的シャペロン効果2016
Author(s)
小澤 大作, 野村 寮, Patrizia P. Mangione, 長谷川 一浩, 大越 忠和, Riccardo Porcari, Vittorio Bellotti, 内木 宏延
Organizer
第16回日本蛋白質科学会年会
Place of Presentation
福岡国際会議場, 福岡市
Year and Date
2016-06-07 – 2016-06-09