2017 Fiscal Year Research-status Report
生体を模倣する試験管内アミロイド線維形成反応系の構築と反応機構の解析
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15K06965
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
長谷川 一浩 福井大学, 学術研究院医学系部門, 助教 (60324159)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内木 宏延 福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (10227704)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 蛋白質 / 変性とフォールディング / 病理学 / アミロイド / アルツハイマー病 |
Outline of Annual Research Achievements |
難治性疾患であるアミロイド症を引きおこす各種アミロイド線維、特にアルツハイマー病βアミロイド(Aβ)およびβ2-ミクログロブリン(β2-m)アミロイド(透析アミロイド)に焦点を当て、生体内環境を忠実に模倣した試験管内アミロイド線維形成反応系を構築する。これを用いて、生体内のアミロイド線維形成過程での前駆体蛋白質や生体分子等の相互作用を再現して反応機構全体を解明し、治療法の探索に用いることを目的とする。特にAβアミロイドでは生理濃度(nM)に近いAβ蛋白質(ペプチド)モノマー濃度で重合反応を行う開放型反応系を構築する。従来の重合反応系ではμMレベルの高濃度のAβ蛋白質を用いていた。より生理的なAβ蛋白質濃度で共存蛋白質等との相互作用を解析することを現在の課題としている。 成果:Aβアミロイド。開放型反応系の基礎構築の更なる検討を行った。アミロイド線維形成の素過程としては、重合核形成、アミロイド線維伸長および二次核形成がある。本年度はこの3過程のうち、アミロイド線維伸長を検出する開放型反応系の改良を行い、測定感度を向上することができた。アミロイド線維が試験管内で伸長する最低濃度である臨界モノマー濃度(20 nM)程度の測定を可能としつつある。 β2-mアミロイド。線維の伸長反応・核形成反応に当たって、前駆体蛋白質のβ2-mの立体構造が部分変性する必要があることが示されている。従来の閉鎖型アミロイド重合反応系では、臨界ミセル濃度程度の界面活性剤を添加してβ2-mを部分変性させ、アミロイド線維を伸長させている。この条件の閉鎖型反応系で重合核形成反応を試みたが、核形成を誘起する生体因子を探索することは難しい可能性がある。そこで、生理的条件下で線維伸長を観測できる開放型反応系の構築を計画した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
(a) Aβアミロイド線維形成反応系の検討。開放型Aβアミロイド線維形成反応系の構築;現在構築中の反応系では、反応容器に評価したい蛋白質を固定化した担体を入れ、低濃度のAβ40蛋白質モノマーを連続的に添加する。アミロイド線維に特異的な蛍光物質であるチオフラビンTを添加しその蛍光を測定することで、線維を定量している。本年度は主に、線維伸長測定のための反応系の改良を試みた。この測定系ではAβアミロイド線維(fAβ)を担体に固定して、Aβ蛋白質モノマーを連続的に添加し、線維の伸長反応を観察している。非特異吸着の改善や、素材の改良により、感度を向上させた。Aβ40のアミロイド線維が試験管内で伸長する最低濃度である臨界モノマー濃度(20 nM)レベルまで測定可能となりつつある。 (b) β2-mアミロイドの検討。β2-mアミロイドでは、線維形成・伸長の際に前駆体蛋白質β2-mの立体構造を脂肪酸、リゾリン脂質などにより部分変性する必要がある。重合核の形成を誘起する生体物質を試験管内で探索する反応系を、閉鎖型反応系を用いて構築を試みた。しかし十分な条件を満たすことが難しいことが判明した。そこで開放型反応系を応用し、生理濃度の脂肪酸、リゾリン脂質などによる線維伸長を観測できる反応系の構築を計画した。
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Strategy for Future Research Activity |
(a) Aβアミロイド線維形成反応系の検討。これまでに、脳内での生理濃度に相当する低濃度のAβ蛋白質の重合挙動を観測できる開放型Aβアミロイド線維形成反応系について、2通りの構築を試みた。すなわち、線維伸長反応のみを測定する方法と、核形成反応と線維伸長反応を含む線維形成反応全体を測定する方法である。平成30年度においては、線維伸長反応の測定を優先的に検討する。最初に、臨界モノマー濃度を実測可能な感度を有する線維伸長反応系を確立する。次いで、下記の検討を行う。すなわち、①脳脊髄液中の蛋白質群である血清アルブミン(HSA)、トランスサイレチン(TTR)、アポリポ蛋白質E(apoE)等の線維伸長に対する効果を解析する。②低濃度Aβ蛋白質モノマーとHSA、TTR、apoEなどの各種蛋白質の結合と競合する生理的リガンドの検出を行う。③Aβ蛋白質モノマーの凝集を生体内において阻止しうる薬剤の探索等を行う。 (b) β2-mアミロイド線維形成反応系の検討。β2-mアミロイドについて生体を模倣する開放型反応系試験管内アミロイド線維形成反応系を構築する。また、沈着局所の細胞外マトリックス成分(プロテオグリカン等) 等が線維形成の相乗効果を示すかを検討し、その結果を反応系に組み込む。これにより、生体内でβ2-mを部分変性させる線維伸長因子の確定を試みる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由と使用計画;Aβアミロイド線維形成の開放反応系の構築において、アミロイド線維形成反応系の構築に時間を要した。このため、反応システムの要素である資材設備の購入や、生体内分子間相互作用を検討するための蛋白質等の消耗品の購入を保留したものがある。これらに相当する経費が残ったものである。 次年度の研究費の使用計画;Aβアミロイド線維形成の開放反応系の構築において、担体、Aβペプチド、共存蛋白質等の購入に用いる。また、構築した反応系を用いたAβ蛋白質と共存蛋白質や薬剤の相互作用を解析するため、当該の試薬の購入等に用いる。また、β2-mアミロイドについて試験管内アミロイド線維形成反応系の部品や、評価する蛋白質等の消耗品の購入に用いる。また、当該研究結果の学会発表の旅費として、また、当該研究成果を論文として発表する際の掲載料として使用する。
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Research Products
(1 results)