2016 Fiscal Year Research-status Report
コンフォメーション固定化抗体を用いた哺乳類の胆汁酸輸送体の結晶構造解析
Project/Area Number |
15K06968
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
野村 紀通 京都大学, 医学研究科, 助教 (10314246)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 膜蛋白質 / トランスポーター / 抗体 / 創薬ターゲット / X線結晶構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
高脂血症治療薬の新たな分子標的であると有望視されている哺乳類のナトリウム依存性胆汁酸輸送体NTCP、ASBTの結晶構造解析を行うことを目的とする。一般に膜輸送体の結晶化が困難である主な原因は、精製試料中で複数の過渡的中間状態のコンフォメーション(基質輸送過程で生じる外向き―内向きのコンフォメーション間での動的平衡)が存在することである。本研究では、野生型と比べてコンフォメーション平衡に顕著な偏りを生じさせた変異型輸送体(コンフォメーション遷移状態アナログ)とコンフォメーション固定化抗体を用いて、胆汁酸輸送体-抗体複合体の結晶化・構造解析を行う。 ナトリウム依存性胆汁酸輸送体では、2個のNa+および1分子の基質(タウロコール酸)の結合によりコンフォメーション変化が惹起され、交互アクセス機構による輸送サイクルが作動する。すでに構造が解かれているASBT細菌ホモログ (PDB: 3ZUY) からの外挿により、ヒト・哺乳類のNTCPおよびASBTのNa+結合部位、胆汁酸結合部位のアミノ酸残基 (計 12-15残基) が予測できる。これらの残基に対して種々の組み合わせでアラニン置換を導入した24個の変異体を作製し、発現試験をSaccharomyces GFP融合系を用いて行った。その結果、発現量・安定性・単分散性の点で優れていると見なされた5個のコンフォメーション遷移状態アナログconformational transition-state analog: CTSA)を選抜した。各々のCTSAについて昆虫細胞Sf9における大規模発現条件・精製方法を最適化し、結晶化に必要な高品質の精製試料を大量に供給できる体制を整備した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト・哺乳類の膜蛋白質の結晶化では、発現量・安定性・単分散性が良好な発現コンストラクトを作製することが最大の難関のひとつである。平成28年度末までにこの困難が克服されてたため、「おおむね順調に進展している」と自己点検評価をした。 研究代表者らはすでに膜蛋白質の結晶化を促進する抗体の作製法に関して独自の技術を有している。平成29年度の初頭に結晶化シャペロンとして機能する抗体を取得して、すみやかにCTSA-抗体複合体の結晶化・構造解析に進める目処が立った。
|
Strategy for Future Research Activity |
リポソーム再構成したCTSAを抗原として、マウス免疫・ハイブリドーマ法ならびにファージディスプレイ法の併用により、各々のCTSA細胞外親水性領域の立体構造を特異的に認識して結合するコンフォメーション固定化抗体を作製する。 各々のCTSAと抗体 (Fab、Fv) を一種類ずつ混合し、あるいは、より親水性領域を拡張する効果を期待して一種類のCTSAに対して複数の抗体を同時に混合することによって複合体を形成させ、ゲル濾過により単分散性を確認するとともにCTSA-抗体複合体を精製する。界面活性剤可溶化状態での胆汁酸輸送体-抗体複合体の蒸気拡散法による結晶化、あるいはモノオレインや7.7MAG等を用いて胆汁酸輸送体-抗体複合体を脂質に再構成後、脂質キュービック相法による結晶化を行う。結晶化に際しては、基質(タウロコール酸)や基質アナログの添加の有無も検討する。得られた胆汁酸輸送体-抗体複合体結晶について、シンクロトロン放射光のマイクロフォーカスビーム (SPring-8のBL32XU) を用いた回折データ収集、構造解析を行う。
|
Causes of Carryover |
研究計画は順調に進んでおり、研究に必要な物品もほぼ計画通りに購入している。次年度使用額の16,946円は主に試薬購入費として使用予定していたものが実支出額と乖離したために生じた。ただし,この額が研究費総額に占める割合はきわめて小さいため、助成金使用計画の誤差の範囲とみなすことができる。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額の16,946円は、翌年度分として請求した助成金と合わせて主に試薬購入費として使用予定である。
|
Research Products
(6 results)
-
-
[Journal Article] High-resolution crystal structure of the therapeutic antibody pembrolizumab bound to the human PD-12016
Author(s)
Horita, S., Nomura, Y., Sato, Y., Shimamura, T., Iwata, S. and Nomura, N.
-
Journal Title
Scientific Reports
Volume: 6
Pages: 35927
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
-
-
-
-