2016 Fiscal Year Research-status Report
フロリゲンによる植物開花メカニズムの全貌解明と応用にむけた分子基盤
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15K06969
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大木 出 京都大学, 工学研究科, 特定研究員 (80418574)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 植物ホルモン / 花成 / 構造生物学 / 育種 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物において、フロリゲンは開花に重要な役割を果たしているタンパク質性の植物ホルモンであり、2007年に初めて同定された。最近、我々は島本らのグループと協力してフロリゲンの受容体を発見した(Taoka, Ohki, Tsuji et al., Nature 2011)。この受容体はフロリゲン経路において中心的な役割を担っていることが現在判明しつつあり、従来の開花制御機構の概念を新たに組み直す必要が出てきている。本研究では構造解析の手法を駆使し、この新規受容体を含めたイネフロリゲン複合体の立体構造解析を行い、開花の分子制御機構の全貌を解明する事を目的としている。研究は2つのテーマ「フロリゲンと花成リプレッサーによる花成制御の分子機構の全貌解明」(1)と「分子機能に基づく人工フロリゲンの開発、大量調整法の確立」(2)に分けて進めている。 今年度はテーマ1「フロリゲンと花成リプレッサーによる花成制御の分子機構の全貌解明」について進めた。前年度の花成リプレッサー単独の構造決定に加えて、リプレッサーーフロリゲン受容体ー花成転写因子からなる3者複合体(花成抑制複合体)の立体構造の解明に成功した。得られた立体構造の解析と生化学的な結合実験から、花成リプレッサーは受容体上のフロリゲン認識部位に結合しており、受容体上でのフロリゲンと花成リプレッサーの競合的な結合が花成促進、抑制複合体の量的なバランスを変化させ、花成時期を調節している事が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はテーマ1の「フロリゲンと花成リプレッサーによる花成制御の分子機構の解明」の解析を進めた。花成リプレッサーーフロリゲン受容体ー花成転写因子の複合体の解明に初めて成功し、今後の開花の促進・抑制機構の解明、制御を進めていくための最も重要な分子基盤が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、テーマ1に加えてテーマ2の分子機能に基づく人工フロリゲン開発も進めていく。本年度の花成抑制複合体の解析より、花成促進・抑制複合体上でフロリゲンと花成リプレッサーが競合するメカニズムの分子基盤が得られた。この情報を基にさらにin vitro, in vivoでの生化学的な解析を進め、また効率的に花成時期を調整できる変異人工フロリゲンの開発も行っていく。人工フロリゲンの開発には、開花の促進抑制の両機能を持たせられるよう、フロリゲンと花成リプレッサーの混合や量的バランスも考慮に入れる。
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Causes of Carryover |
来年度に研究を予定している人工フロリゲン開発・応用の規模を予定より大きくするため、必要分を来年度に繰り越した
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
人工フロリゲン開発・応用のための試薬、装置(グロースチャンバー)の購入
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