2015 Fiscal Year Research-status Report
X線構造に基づくクロストリジウム属特異的溶菌酵素の細胞壁認識分解機構の解明
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15K06973
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
神鳥 成弘 香川大学, 総合生命科学研究センター, 教授 (00262246)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 裕美 香川大学, 総合生命科学研究センター, 准教授 (10313305)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | X線結晶解析 / 溶菌酵素 / 糖鎖加水分解酵素 / 細菌細胞壁 / ペプチドグリカン / ウェルシュ菌 / ディフィシル菌 / SH3ドメイン |
Outline of Annual Research Achievements |
細菌は,網目構造の高分子ペプチドグリカンからなる強固な細胞壁により細胞の形態を保持している。溶菌酵素は,細胞壁を分解することにより細菌を死滅させる。病原性クロストリジウム属細菌に働く溶菌酵素は,ペプチドグリカン分解ドメイン(触媒ドメイン)と細胞壁結合ドメインを持ち,その溶菌活性は極めて種特異的である。本研究の目的は,クロストリジウム属特異的溶菌酵素について,細胞壁フラグメントとの複合体のX線結晶解析を行い,種特異的な細胞壁認識分解機構を分子レベルで解明することである。食中毒やガス壊疽の原因となるクロストリジウム属のウェルシュ菌が持つオートライシンAcp(Autolysin Clostridium perfringens)は,アミノ酸配列から,N末側にバクテリアSH3ドメイン構造モチーフのドメインが10個つながった細胞壁結合ドメインと,C末側にGH73(グルコサミニダーゼ)に属する触媒ドメインを持つことが予想され,その3次元構造および細胞壁認識機構には大変興味が持たれる。平成27年度においては, Acpの触媒ドメイン(AcpCD)について,X線結晶解析により2.25Å分解能で3次元構造を決定することに成功した。AcpCDの構造は,8本のαへリックスからなる本体のドメイン(αドメイン,203アミノ酸)と,そこからアーム状に突き出たドメイン(アームドメイン,68アミノ酸)からなる。αドメインの構造は,他のGH73に属するタンパク質と相同性が高く,予想される活性部位は,αドメインとアームドメインとの間に位置している。このことから,AcpCDは,基質であるペプチドグリカンを,両方のドメインで挟むように認識して加水分解することが予想される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ウェルシュ菌オートライシンの触媒ドメイン(AcpCD)の3次元構造をX線結晶解析により決定することができ,学会発表を行い,現在論文準備中である。ディフィシル菌由来のオートライシンAcdについても,触媒ドメインおよび全長の発現・精製に成功しており,現在,結晶化に着手している。また,本研究課題の先行研究の結果を含め,細菌細胞壁結合能を持つバクテリアSH3ドメインについて,Springer International Publishing AG の成書「SH Domains: Structure, Mechanisms and Applications」にて,1つの章「Structure-function relationship of bacterial SH3 domains」の執筆を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
ウェルシュ菌オートライシン(Acp)は,N末側にバクテリアSH3ドメインを10個持ち,全長での発現が難しい。そこで,まず,触媒ドメインに近いところから1つずつ増やしながら発現・精製を行っており,現在2~4個加えた状態で発現させることに成功している。今後,Acpについては,触媒ドメインと2~4個のバクテリアSH3ドメインを持った状態でX線結晶解析を行い,触媒ドメインとバクテリアSH3ドメインとの空間的位置関係を明らかにしていきたい。ディフィシル菌オートライシン(Acd)については,触媒ドメインおよび全長(触媒ドメインに加えてバクテリアSH3ドメインが4つ)の発現に成功しており,これらのX線結晶解析を行い3次元構造を明らかにしていきたい。また,現在,細菌細胞壁ペプチドグリカン架橋の立体構造情報を得るため,細菌細胞壁にタンパク質を繋げる酵素であるSortaseについての研究に着手している。これらの構造学的研究も展開していきたい。
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Research Products
(4 results)