2015 Fiscal Year Research-status Report
ナノディスクに組み込んだカルシウムポンプを用いた脂質タンパク相互作用の解析
Project/Area Number |
15K06988
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
山崎 和生 旭川医科大学, 医学部, 講師 (60241428)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | カルシウムポンプ / イオン輸送 / ナノディスク / 静電的相互作用 / リン脂質 / 膜タンパク |
Outline of Annual Research Achievements |
筋小胞体カルシウムポンプ(SR Ca2+-ATPase)をアルキル鎖は同じでヘッドグループの異なるリン脂質(POPC, POPE, POPG)を持つナノディスクに組み込む条件を探索した。それぞれ単一の脂質を持つナノディスクに組み込むだけではなく、混合脂質のナノディスクに組み込むことができることを確認し、形成したCa2+-ATPaseを含むナノディスクをゲルろ過によって分離精製できることが示された。 この標品を用いイオン強度を変化させ、リン酸化中間体(EP)の分解速度を測定することにより、脂質頭部の違いによるEP転換速度への影響を静電的相互作用と立体的な相互作用とに切り分けて解析した。その結果、頭部の電荷が等しいPOPCとPOPEではPOPCの方がEP転換活性が高くなっているが、静電的相互作用の寄与はどちらも同じ程度あり、立体的な障害により、POPEの方が活性が抑えられていることを明確に示すことができた。またこれらの脂質と比較して頭部に負電荷をもつPOPGでは静電的相互作用が反応速度を抑える方向で働いており、膜表面の負電荷はこの反応ステップを抑制する可能性が示された。また立体的な相互作用の面では試した3種のリン脂質の中ではPOPGが一番この反応ステップに適した脂質であった。 2種類の脂質を混ぜたナノディスク標品の静電的相互作用と立体的な相互作用のEP転換へに寄与の解析では、POPGとPOPCあるいはPOPGとPOPEの混合脂質では、それぞれ単一のナノデスクの中間的な性質を持っていたが、POPEとPOPCの混合脂質では、立体的相互作用の寄与は中間的になるが、元々同程度だった静電的相互作用の寄与は単独の脂質よりも抑えられることが明らかとなった。この結果は中性脂質であるPCとPEが混合すると負電荷を帯びる可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では平成27年度の計画は次のようにしていた。「POPC、POPE、POPG、POPSを用いたナノディスクに、Ca2+-ATPaseを活性を保ったまま効率よく組み込む条件を探す。その際単一の脂質だけでなく異なる脂質の比率を変えたものの作成も試みる。そののち精製をして純度の高い均一な標品を得ることを目指す。そのためにはゲル濾過やイオン交換カラム、限外濾過フィルターによる分画を行う。得られたサンプルのCa2+-ATPase/MSP比、タンパク質/脂質比、脂質組成の決定を行い目的のサンプルが得られていることを確認する。初年度ではまず、このようにして得られたサンプルのEP転換速度に対する影響を塩濃度を変えて測定することにより、この反応ステップへの脂質の関与を調べる」 実際にはPOPSを除く3種の脂質についてナノディスクへの組み込み条件を確定させ、それを精製しEP転換ステップの解析に用いて実際にデータを得ることが出来ている。またそのデータは予測通りのものだけでなく、新しい知見の手がかりとなるものが得られており非常に興味深いものである。以上の状況から、現在の進捗状況はおおむね順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまず、先送りになっていたPOPSを用いたナノディスクへのカルシウムポンプの組み込みを行い、その標品を用いて先の脂質の場合と同様の解析を進める。次に複数の脂質混合したナノディスクを用いた解析を進め、リン脂質の量比を変えたナノディスクの作成及びそれを用いた脂質の電荷とEP転換ステップにおける静電相互作用の寄与とに関係についての定量的な解析を試みる。この際、作成したナノディスクの脂質組成の検定のため脂質分析をすることを考えている。また、POPCとPOPEの混合脂質において、元々同程度だった静電的相互作用の寄与は単独の脂質よりも抑えられる現象の解明を目指す。
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Causes of Carryover |
リン脂質のうちPOPSは国内で製造されておらず、他の脂質と比べて高いため、少量購入にとどまった。このため少し消耗品費が浮いている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の予算と合わせ、POPSの追加購入に充てる。
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Research Products
(5 results)