2017 Fiscal Year Research-status Report
癌細胞による細胞外マトリックスリモデリング受容機構における脂質ラフトの役割
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15K06998
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
村井 稔幸 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (20311756)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 細胞・組織 / シグナル伝達 / 分子認識 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん細胞は、腫瘍組織に形成される細胞外マトリックス(extracellular matrix)との相互作用を通して浸潤能を獲得し、転移する。本研究代表者は、腫瘍組織の主要な細胞外マトリックス成分であるヒアルロン酸の断片化による細胞外マトリックスリモデリング(extracellular matrix remodeling)が、がん細胞の浸潤性を亢進する機構を解明してきた。本課題では、脂質ラフトの役割に焦点を当て、新手法を導入することにより、これまで困難であった細胞膜のメゾスコピックな動的秩序形成機構の解明をおこなうことを目的とした。 脂質ラフトは、光の回折限界の理由から、従来の光学顕微鏡を用いて明瞭に可視化することは困難である。この問題点を解決するため、本研究課題においては、細胞外マトリックスリモデリングをがん細胞が受容するときの脂質ラフトの役割について、走査電子顕微鏡(scanning electron microscope)などを用いた解析を引き続いて進めた。 特に、脂質ラフトと細胞表面微細構造との関連を解き明かすため、上記の顕微鏡像などについて画像解析をさらに発展させる検討をおこなった。さらに、腫瘍組織に形成される細胞外マトリックスのリモデリングをがん細胞が受容するメカニズムを解明するため、細胞の染色の方法や培養基板の調整をおこなった。ここで得られた研究の成果は、がん浸潤・転移を阻止する手段の開発に対する貢献につながるのみならず、この分野の研究手法と技術の進展にも大いに貢献できると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度においては、交付申請書に記載した「研究の目的」および「研究実施計画」に沿って研究を実施し、十分な研究成果を得た。よって、おおむね順調に進展していると評価された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、平成27年度から平成29年度における高分解能顕微鏡を用いた研究成果を結集する。さらに、細胞膜モデルを用いた検証、およびショ糖密度勾配遠心分離による界面活性剤不溶性画分(DRM)の調製を行い、結果解釈を裏付けるデータを得る。これらを統合して、がん細胞による細胞外マトリックスリモデリング受容機構における脂質ラフトの役割を明らかにする。
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Causes of Carryover |
(理由) 研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なった。
(計画) 研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。平成30年度において当該研究費を合わせて使用することで、研究計画全体の達成に向けたより効果的な使用をおこなう。特に、高分解能顕微鏡解析手法の確立に対して使用する。
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