2016 Fiscal Year Research-status Report
阻害剤作用機構研究を基盤とした呼吸鎖酵素NDH-2の反応機構の解析
Project/Area Number |
15K07005
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
山下 哲生 香川大学, 医学部, 助教 (80444727)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 基質結合部位 / ユビキノン / 酵素の触媒機構 / フラボプロテイン / 薬剤標的分子 / 結晶構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
ユビキノンを基質にする呼吸鎖酵素群においてユビキノン結合部位は構造的な相同性が低く薬剤の特異的な標的部位になり得るため、本研究では東京大学の北潔教授が保有しているエネルギー代謝系で機能する呼吸鎖酵素(特にユビキノン結合部位)に対する阻害剤ライブラリー(約300種)をスクリーニングし、その中からNDH-2の特異的阻害剤を週種類見出した。これら化合物のNDH-2に対する阻害様式を反応速度論的に調べたところ、化合物A(未発表のため名前を伏せる)のみが拮抗阻害を示し、残りの化合物は混合阻害を示した。これまで酵母NDH-2を含め他の種のNDH-2においてもユビキノン結合部位に対して拮抗的に作用する阻害剤は報告されておらず、本研究によってはじめて拮抗阻害剤が見出された。化合物Aを含めた阻害剤とNDH-2の共結晶が得られたことから、大型放射光施設SPring-8やPhoton Factoryを利用した構造解析が行われ、分解能の高い構造を明らかにした。未発表のため詳細は述べられないが、阻害剤結合部位に関する知見として拮抗阻害を示す化合物Aと混合阻害を示す阻害剤では、酵素への結合位置に明らかな違いがあることが分かった。化合物Aの結合部位は他のグループが報告しているユビキノン結合部位と一致しており、また、その部位に変異を導入し酵素反応論的解析を行ったところ、化合物Aに特異的な結合部位の変異は基質であるユビキノンへの親和性を大きく低下させることが明らかとなってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究における基盤となり得る「酵母NDH-2のユビキノン結合部位を標的とした阻害剤の検索」実験に関して、ユビキノン結合部位に対する阻害剤ライブラリーを利用することにより非常に効率よく進めることが出来た。そのため「酵素と阻害剤の共結晶化による阻害剤結合部位の同定」実験を前倒しで進めることが出来、阻害剤とNDH-2の共結晶化実験は以前の結晶化条件を一部改良することで、ほとんどの阻害剤と共結晶が得られている。現在、得られた構造の情報を基に、本来の基質結合部位の同定を目的に部位指定変異体を作成し、反応速度論的解析により基質との親和性に影響を与えるかを解析している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在得られている阻害剤についてはNDH-2との共結晶構造解析が進んでいるため、今後、阻害剤の阻害様式および実際の結合部位から、基質結合部位を予測し部位指定変異体を用いた解析によって基質であるユビキノン結合部位を同定する。また、分子内電子伝達の詳細を理解するため、構造情報に基づいて電子伝達に関与すると予測されるアミノ酸に変異を導入し、反応速度論的解析を行っていく。
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Causes of Carryover |
本年度、論文投稿料を計上していたが、論文投稿が年度中の行えなかったため差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究計画の進捗に合わせ、平成29年度に予定している消耗品の購入する。また学会参加、論文投稿に伴い学会参加費および投稿料を計上する。
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Remarks |
香川大学医学部自律機能生理学のホームページの中の「研究紹介」より
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Research Products
(1 results)