2015 Fiscal Year Research-status Report
ミトコンドリア形態制御におけるAAA型分子シャペロンCdc48の役割
Project/Area Number |
15K07007
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
江崎 雅俊 熊本大学, 発生医学研究所, 助教 (70437911)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | Cdc48 / p97 / ミトコンドリア / タンパク質分解 / AAAタンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞内でミトコンドリアは,融合と分裂を頻繁に繰り返している。この動的変化はミトコンドリアの活性維持に必須である。私たちは,Cdc48 の機能欠損が,ミトコンドリアの形態異常を引き起こすことを見出した。 Cdc48はサイトゾルに局在するAAAシャペロンで,ユビキチン化されたタンパク質を主な基質とし,その高次構造をほどいたり,複合体を脱会合したりすると考えられている。Cdc48は,細胞内で様々な反応において必須の役割を担っていることが明らかとなってきた。これらの機能の多様性は,Cdc48に結合するアダプタータンパク質によって調節されていると考えられている。そこで,ミトコンドリア形態維持に関与するアダプタータンパク質の検索を行った。アダプタータンパク質は,Cdc48と直接相互作用するモチーフ配列を持っており,これまでにUBX,VIM,SHP,PULといったコンセンサス配列が同定されている。出芽酵母にはこれらの配列を持つタンパク質が約20種類存在するが,Ufd1-Npl4複合体以外は細胞の増殖に必須ではない。そこで,これらのアダプタータンパク質の遺伝子を欠失した酵母株を作製し,それぞれの欠失株におけるミトコンドリア形態を観察した。その結果,UBP3およびUBX5欠失株において著しいミトコンドリア形態異常が観察され,OTU1およびUBX2欠失株において弱いミトコンドリア形態異常が観察された。 これまでに,ミトコンドリア融合反応に必須なミトコンドリア外膜タンパク質であるFzo1がCdc48の基質である可能性を見出しており,我々はFzo1の分解を促進することによってミトコンドリア融合反応を制御しているという仮説を提唱している。しかしながら,ミトコンドリア形態異常が観察された酵母株において,Fzo1の安定性に変化はほとんど見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の予備実験において,いくつかのCdc48のアダプタータンパク質について,その遺伝子欠失酵母株を作製し,ミトコンドリア形態観察を行った。その結果,SHP1およびUBX2の欠失株においてミトコンドリア形態異常が観察された。これらをまず詳細に解析したところ,SHP1欠失株については,遺伝子欠失が増殖阻害を引き起こし,それによる二次的効果としてミトコンドリア形態異常が観察された可能性が浮上した。そこでまず,他のCdc48アダプタータンパク質の検索を優先し,これを網羅的に検索した。その結果,新たに複数の因子の欠失によってミトコンドリア形態異常が観察されることが明らかとなった。しかしながら,これらの単独欠失株ではCdc48の基質であると考えられるFzo1の安定性に変化はほとんど見られなかった。このことは,2つの可能性を示唆する。第1に,Fzo1の分解ではなく,複合体の解体がミトコンドリア融合反応に必須である可能性である。第2に,複数のアダプタータンパク質が相補的に働いており,見かけ上Fzo1の安定性に変化が見られなかった可能性が考えられる。そこでまず,複数の因子を同時に欠失した酵母株を作製した。今後,これらの株におけるミトコンドリア形態およびFzo1の安定性を調べていく予定である。 Cdc48の機能解析を行う上で,ともに機能するアダプター因子の同定は必須である。これらの因子の候補が同定されたことから,次年度においてより詳細な解析を行うことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
Cdc48は,いかにしてミトコンドリア融合を制御しているのか,その分子基盤の全容を解明することが本研究課題の目的である。Cdc48の基質候補としてFzo1を我々はすでに同定している。 Fzo1は,N末端領域でミトコンドリア外膜に結合し,タンパク質の大部分をサイトゾルに露出した構造をとっている。ミトコンドリア膜融合の過程において,異なるミトコンドリア上にあるFzo1同士がtrans複合体を形成し,これによって異なるミトコンドリア外膜が近接し,融合反応が起こると考えられている。この融合反応の際,Fzo1のリジン398がユビキチン化(K398Ub)されることが知られているが,その役割は不明である。また,trans複合体は何らかの方法によって解体されなければならないが,タンパク質分解反応によって解体されるのか,それとも脱会合されてリサイクルされるのかなど,その過程は全くわかっていない。さらに,K398とは異なる部位もユビキチン修飾されることが明らかとなっており,これはFzo1の分解を促進する。このように,異なるユビキチン化によってFzo1の機能は調節されているというモデルが提唱されている。 これまでに同定した,ミトコンドリア形態に影響を与えるCdc48のアダプタータンパク質の欠失によって,Fzo1のユビキチン修飾や分解がどのように変化するのか,Cdc48との相互作用はどうか,またこれらの変化にはCdc48およびアダプタータンパク質のどのような特徴が関与するのか,などの点を明らかにする。
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Causes of Carryover |
本研究課題の予備実験において,いくつかのCdc48のアダプタータンパク質について,その遺伝子欠失酵母株を作製し,ミトコンドリア形態観察を行った。その結果,SHP1およびUBX2の欠失株においてミトコンドリア形態異常が観察された。これらをまず詳細に解析したところ,SHP1欠失株については,遺伝子欠失が増殖阻害を引き起こし,それによる二次的効果としてミトコンドリア形態異常が観察された可能性が浮上した。当初計画ではShp1について詳細な解析を行う予定であったが,これを変更し,Cdc48のアダプタータンパク質の網羅的な探索をまず行うこととした。 このような,研究の進展に伴う計画の変更によって,当初予定していたよりも消耗品費が低く抑えられることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
これまでにミトコンドリア形態制御に関わるCdc48のアダプタータンパク質の候補を複数見出している。今後,当初計画と因子そのものは異なるが,解析方法・手法等は計画に則り,今回新たに同定したアダプター因子について詳細な機能解析を行っていく予定である。
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