2018 Fiscal Year Research-status Report
ATP合成酵素のATPモーターとプロトンモーターをつなぐ分子内クラッチ
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15K07013
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
山田 康之 立教大学, 理学部, 教授 (80386507)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 脱共役 / 酸化的リン酸化 / プロトン輸送 / 律速 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、不活性変異体を用いた脱共役状態の解析などに取り組んだ。 cサブユニットにプロトン結合部位を持たない変異体は、cサブユニットリングが回転できないため、共役状態においてはF1の回転も抑えられ、したがってATPase活性を持たないものと予想していたが、実際にはATPase活性を持つことが確認された。この変異体ではcサブユニットリングが空回りしてしまう可能性が考えられた。そこで低いながらもプロトン輸送活性を持ち、F1ではなくcサブユニットの回転が律速となるような変異体を作製し、そのATPase、GTPase活性を検討することとした。プロトン結合部位のグルタミン酸をアスパラギン酸に置換した変異体や、アミノ酸の位置をずらした変異体をいくつか作製した。これらの変異体では、予想通りATPaseの低下が観察されたが併せてGTPaseの低下も観察された。この結果からGTPを基質とした場合でも完全に脱共役しているわけではなく、ATPを基質した場合の半分程度は共役している可能性や、脱共役状態でもcサブユニットリングが回転している可能性などが考えられた。これらの変異体のプロトン輸送活性は低いと考えられ、まだ測定できていない。今後測定条件を検討しNTPase活性だけでなくプロトン輸送活性についても評価したいと考えている。 この他、枯草菌ATP合成酵素の活性調節が生理的にはどのように機能するのかを明らかにした。脱共役状態の生理的な意義についても、このような実験系を用いることで明らかにできると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在得られている結果が、変異体そのものの性質を反映したものなのか、あるいは培養条件やサンプル調製の条件に依存して部分的に機能が損なわれてしまっているのかを明確に区別することが難しいため、当初予定より進捗がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き不活性変異体を用いた解析やBiacore測定のためのサンプル調製の検討を行うとともに、本研究で主な対象としている好熱菌ATP合成酵素の高分解能の全体構造が明らかとなったので、この情報を用い、以前行ったサブユニット間架橋の実験について架橋部位を再検討し、再度試みることを予定している。
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Causes of Carryover |
不活性変異体の挙動が当初予想したものと異なり、これを考慮した新たなモデルの構築に時間を要している。また、Biacoreの測定に必要なcサブユニットリングの調製についても検討が遅れている。その他、研究代表者の役職就任に伴う多忙などの事情により、進捗に遅れが生じ、当初の予定より支出が少なくなった。 共役状態の良いサンプル調製の条件検討やBiacore測定用サンプル調製などに必要な界面活性剤など、主に試薬の購入に助成金を用いる。
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Research Products
(3 results)