2016 Fiscal Year Research-status Report
翻訳後脂質修飾によるHCNチャネルの新たな制御機構
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15K07017
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
伊藤 政之 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 病態生化学研究部, 科研費研究員 (20442535)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | HCNチャネル / イオンチャネル / パルミトイル化 / 翻訳後修飾 / ZDHHCタンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究で我々は神経や心ペースメーカー細胞において自発発火特性の制御を担う過分極誘発陽イオンチャネル(HCNチャネル)であるHCN1,HCN2,HCN4が実際にパルミトイル化を受けていることなどを明らかにした(伊藤ら,JPS 2016)。また、HCN2をパルミトイル化する責任酵素(Zdhhcタンパク質)を同定し、その中でも特にZdhhc3,Zdhhc7はチャネルタンパク質の細胞膜への移行には関与せず、既に細胞膜上に存在するチャネルタンパク質の活性を調節している可能性が示唆する結果を得ることが出来た。これについては現在投稿準備中である。今年度はHCN2に加え、脳神経系での機能が確立しているHCN1についてパルミトイル化する責任酵素の同定を目指し、HCN1に関してもHCN2とほぼ同様の分子種によってパルミトイル化が促進されることを示す実験結果を得た。更にこれまで主に異所性発現系を用いた解析を行ってきたが、これに加え実際に生体組織に発現する内在性のチャネルタンパク質がパルミトイル化を受けているかどうか明らかにするため、マウス脳よりパルミトイル化タンパク質を網羅的に精製する実験系を立ち上げ、脳組織に発現する内在性のHCN2が実際にパルミトイル化を受けていることを示す結果を得た。これについては今後、HCN1およびHCN4についても同様の実験を行い、内在性のチャネルタンパク質が実際にパルミトイル化を受けているかどうか明らかにし、その後の生理機能の解明に繋げたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
今年度はパルミトイル化酵素(Zdhhcタンパク質)全24種類を発現ベクターに組込み、これらをHEK293細胞にHCN1と共発現させ、クリックケミストリー法によりHCN1のパルミトイル化を促進する分子種を探索し、HCN2とほぼ同様の分子種によってパルミトイル化が促進されることを示す実験結果を得た。また、Acyl-biotinyl Exchange(ABE)法によりマウス脳よりパルミトイル化タンパク質を網羅的に精製し、脳組織に発現する内在性のHCN2が実際にパルミトイル化を受けていることを示す結果を得ることが出来た。以上の様に主に異所性発現系を用いた実験により、HCNチャネルがパルミトイル化の標的に成り得ることについては明らかにすることが出来たが、その細胞レベル、更には個体レベルでの生理機能の解明に繋げていくために今年度は実験を大きく切り替える予定であった。新生児心室筋の初代培養細胞を用いた実験を予備的に行ったが、リポフェクション法による遺伝子導入が難しく、この系を使用した実験の継続は困難であると判断した。そこで今年度より特に神経系の培養細胞を用いた実験を推進するため国立精神・神経医療研究センター神経研究所病態生化学研究部に異動し、現在、海馬の錐体細胞の初代培養および海馬の急性スライス標本を用いた電気生理学的実験について、実験技術の習得に努めている最中である。
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Strategy for Future Research Activity |
以上の様に今年度より国立精神・神経医療研究センター神経研究所病態生化学研究部に異動し、HCNチャネルのパルミトイル化について主に脳神経系での生理機能について細胞・組織レベル、更には個体レベルでの生理機能の解明に繋がる実験に大きく切り替える予定である。現在、海馬CA1錐体細胞のスライスパッチクランプ法によるシナプス伝達および膜特性の解析法と、細胞外記録法によるCA3-CA1シナプスの長期可塑性(LTP,LTD)の解析法について技術の習得に努めている。HCNチャネルの中で特にHCN1についてはCA1錐体細胞における生理機能が確立されており、今後HCN1のパルミトイル化がこれらの指標にどのように関与しているのか興味が持たれる。また、現在の研究室では海馬の錐体細胞の初代培養を日常的に行っており、これに関してはリポフェクション法による遺伝子導入が可能ではあるため、この系を用いてパルミトイル化がHCNチャネルの細胞内局在に与える影響についても実験を行う予定である。
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Research Products
(2 results)