2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K07023
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
新井 宗仁 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (90302801)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 蛋白質 / フォールディング / 天然変性蛋白質 / 分子認識 / NMR |
Outline of Annual Research Achievements |
天然変性蛋白質は、生理的条件下では特定の構造を持たず、標的蛋白質の認識・結合と同時にフォールディング(構造形成)する。その仕組みとして、2つのモデルが提唱されている。一つは「誘導適合機構」であり、天然変性蛋白質が標的分子と結合した後に折りたたまれるというモデルである。もう一つは「構造選択機構」であり、天然変性蛋白質は単独ではひも状のままで揺らいでいるが、ある特定の構造に一時的に折りたたまれたときにのみ、標的分子と結合するというモデルである。これまでの研究から、天然変性蛋白質に応じて分子認識機構が異なることが示された。それゆえ、分子認識機構の決定因子を解明し、あらゆる天然変性蛋白質の分子認識機構を統一的に理解することが本研究の課題である。平成27年度は、次の成果を得た。
天然変性蛋白質c-Mybが標的蛋白質KIXを認識する反応をNMR R2緩和分散法で測定したデータを詳細に再検討した結果、c-MybのN末端側は構造選択機構によってKIXと結合するのに対し、c-Mybの残り半分は誘導適合機構で結合することが明らかになった。つまり、1つの蛋白質内に2種類の仕組みが共存していた。また、2つの領域ではヘリックス構造への折りたたみやすさが異なっており、折りたたみやすさが分子認識機構を決定することが示唆された。
面白いことに、生体内で合成されたらすぐに標的と結合して機能を発揮すべきc-Mybでは、ヘリックス構造に折りたたみやすい領域を持ち、構造選択機構で標的と結合しうるのに対し、リン酸化という修飾を受けた場合にのみ標的と結合すべき天然変性蛋白質pKIDでは、ヘリックス構造を形成しにくく、誘導適合機構によってKIXと結合する。したがって、天然変性蛋白質は、それぞれの機能に応じて折りたたみやすさが異なり、結合の仕組みも異なることが示唆された。本研究では更に、天然変性蛋白質Tat、c-Fos、Herstatinなどについての構造物性解析も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、分子認識機構の決定因子を3年間かけて解明することを目指していたが、1年目で既に、決定因子が二次構造(ヘリックス構造)への折りたたみやすさであることが示唆された。また、1つの蛋白質の中に2つの分子認識機構が共存しているという画期的な成果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
天然変性蛋白質による分子認識機構を統一的に理解するためには、多くの例を集め、一般にどの機構が多いのかを調べる必要がある。標的蛋白質KIXは、c-Mybの他に、10数種の天然変性蛋白質と結合できる。そこで、それらの様々な天然変性蛋白質によるKIX認識機構を解明し、一般的傾向を調査する。
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Causes of Carryover |
本研究には、c-Mybについての研究課題と、それ以外の天然変性蛋白質についての研究課題とがある。平成27年度は前者の課題に関して画期的な成果が得られたため、その課題に注力した。その分、後者の課題の研究の一部が次年度に持ち越しになったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額については、平成28年度に、c-Myb以外の天然変性蛋白質についての研究課題を遂行するために使用する予定である。主な使途は物品費である。
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Research Products
(16 results)