2015 Fiscal Year Research-status Report
ホモダイマー型光合成反応中心の分子構築と反応制御機構の解明
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15K07026
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大岡 宏造 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (30201966)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 光合成 / 反応中心 / 緑色イオウ細菌 / ヘリオバクテリア / タイプ1反応中心 / ホモダイマー / FeSタンパク質 / ESR |
Outline of Annual Research Achievements |
1.緑色イオウ細菌反応中心の励起エネルギー移動経路の解析: すでにPscAのH79, H164, H487をLeu残基に置換した部位特異的変異体を作成している。低温77 Kでの時間分解蛍光スペクトル変化のデータは取得済なので、本年は低温吸収スペクトルを測定し、吸収バンドと蛍光バンドとの対応付けを行った。 2.ヘリオバクテリア反応中心のFA/FBクラスターの配向解析: FA/FBは末端電子受容体として機能し、低分子量タンパク質PshB(5.6 kDa)の2個のシステインモチーフに配位している。今回、配向膜を用いて膜面に対するFA/FBの配向をESRにより調べた。g値と膜の垂直軸にたいする角度は、FAに関してはgz = 2.046 (30°), gy = 1.942 (60°), gx = 1.911 (90°) 、FBに関してはgz = 2.063 (60°), gy = 1.942 (60°), and gx = 1.886 (45°)であった。また酸化還元電位は、FBの方がFAよりも高いことが示唆された。このことはPS IのFA/FBの配向、機能とは真逆の対応付けであることを意味し、電子移動はFX -> FB -> FAの順番で生じることが示唆された。 3.ヘリオバクテリア反応中心のFA/FBタンパク(PshB)の発現系構築: ホモダイマー型コアタンパク(PshA/PshA)との再構成実験を目指し、PshBタンパクの大腸菌での大量発現系を構築した。FeS タンパク質の発現効率を高めるために、iscオペロン、sufオペロンとの共発現を試みたところ、iscオペロンが有効であることが確認された。 4.ヘリオバクテリア反応中心の結晶化・構造解析:昨年度より回折実験可能な回折強度データが得られているが(未発表)、さらなる分解能向上を目指し、諸条件の再検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでも人工的ヘテロダイマーの収率向上に向けて努力してきたが、現在に至るまで残念ながら良好な結果が得られていない。in vivoでの発現量を大幅に上昇させるには発現コンストラクトを考え直す必要があり、プロモーター部やSD配列等を見直すなどして有効な方策を検討中である。そのため生化学的な側面から、菌体の破砕効率と膜からの可溶化効率を向上させることを目指した。菌体の破砕効率を向上させる方法として、フレンチプレス処理に加え、超音波による破砕を行った。一方、膜からの可溶化効率を向上させるためにイオン強度を上げての可溶化を試みた。しかしながら両者とも芳しい改良が見られなかった。それゆえ本年度は研究概要にも記したように、エネルギー移動経路の解析、電子伝達成分FA/FBの膜面に対する配向性、再構成実験に向けたFA/FBタンパクの大量発現系構築、そして反応中心の結晶構造解析を進めることにした。これらに関しては、良好な結果が得られつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画である人工的ヘテロダイマーの収率向上および解析については進捗状況が思わしくない。そこで野生型反応中心の物理化学的な解析を推し進めながら、人工的ヘテロダイマーの収量向上に向けて分子遺伝学的・生化学的な改良等を行っていくことにする。 1.ヘテロダイマーの収量向上に向けて: 緑色イオウ細菌反応中心の研究をスタートさせた当時(20年ほど前)は、菌体の破砕方法としてリゾチーム処理を予備的に試みたことがある。確かにリゾチーム処理は有効な方法であることは確認したが、当時はタグ精製方法を確立させていなかったので、他のタンパク質が混入することを避けるために本処理は採用しなかった経緯がある。タグ精製という手法を確立させた現在、再度、リゾチーム処理による破砕を検討したい。 2.電子伝達成分間の配向性と距離の算出: 研究計画に記載しているように、ESR法によりP+とA1-、およびP+とFX-間の配向性と距離を求める。必要に応じてヘリオバクテリアの単結晶を用い、より高い精度のスペクトル解析を行う。 3.反応中心の結晶化および構造解析: 引き続き、分解能向上に向けた結晶化に取り組んでいく。
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Causes of Carryover |
年度末にPCR装置が故障したため新規購入を前提に予算の使用を控えたが、3月末に修理可能であることが判明した。また、投稿中の論文の掲載料を確保していたが、大幅な改訂であったため、年度内に受理してもらえなかった。これらの理由により、次年度の予算使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
投稿論文の掲載料、および今年度の研究遂行に必要とされる試薬類、データ解析ソフトの購入費として使用予定である。
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Research Products
(13 results)