2015 Fiscal Year Research-status Report
骨格筋・心筋収縮のカルシウム制御機構の高分解能クライオ電子顕微鏡法による解明
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15K07032
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
若林 健之 帝京大学, 理工学部, 教授 (90011717)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | トロポニン / トロポミオシン / アクチン / カルシウム制御 / 筋肉収縮 / 家族性ヒト心筋症 |
Outline of Annual Research Achievements |
心筋・骨格筋の収縮弛緩はCa2+濃度により制御され、Ca2+はトロポニンに結合し、トロポニンはアクチンフィラメント上のトロポミオシンを動かし、アクチンのミオシン結合を制御する。そこで、アクチン・トロポミオシン・トロポニン複合体構造を、高分解能クライオ電子顕微鏡像を単粒子解析しαへリックスを直視できる分解能(6-8 オングストローム)で解き、制御メカニズムを解明することを目的とする。 この目的を達するために、 300 kV 加速電圧の電子顕微鏡に備えられたダイレクトカメラ(K2 summit または Falcon II)を用いて高分解能クライオ電子顕微鏡像を収集した。試料としてはアクチンフィラメントおよびこれに制御タンパク質が結合させ筋肉の細いフィラメントを再構成した複合体を用いた。 構造単位として、アクチン×28、トロポミオシン×4、トロポニン×4からなるものを単粒子と見なして、収集した像を画像解析ソフトウェアパッケージであるEosシステムを用いて単粒子解析している。計画したように、試料の像を二つのフォーカスで連続的に撮影するダブルフォーカス法を実施できた。計画段階では、両者の対応を付けるには、二枚の画像の相関関数を計算し、相対的位置関係を求めることが必要と予想したが、ダイレクトカメラの高いDQE(Detective Quantum Efficiency)のお陰で低デフォーカス量(-1 マイクロメーター)でも、フィラメントは視認でき、高デフォーカス量(-3マイクロメーター)での像と目視で対応を付けることが出来た。 画像のフーリエ変換パターンから、コントラスト伝達関数を推定する際の手がかりであるThonリングも 0.8 nm を越えて観察出来ている。今後は、これまでとは異なるデフォーカス量での電子顕微鏡画像を収集する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画したように、試料の像を二つのフォーカスで連続的に撮影するダブルフォーカス法を実施した。一枚目は正照準に近いデフォーカス量で高分解能を目指し、二枚目はより多くデフォーカスして、フィラメントの視認性を高めた。計画段階では、両者の対応を付けるには、二枚の画像の相関関数を計算し、相対的位置関係を求めることが必要と予想したが、ダイレクトカメラのDQE(Detective Quantum Efficiency)は高いので、低デフォーカス量(-1 マイクロメーター)でも、フィラメントは視認でき、高デフォーカス量(-3マイクロメーター)での像と目視で対応を付けることが出来た。 また、低デフォーカス量でのフィラメント像の良好な視認性は、試料の生化学的条件を整えたこと、電子顕微鏡グリッドの前処理の方法について良いアドバイスが得られたこと、急速凍結のために用いたVitrobotの条件出しに成功したこと等から適切な厚さの非晶質の氷に試料フィラメントを包埋することが出来、S/Nの良い像が得られたことにもよっている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、再構成した細いフィラメントの低カルシウム状態での高分解能クライオ電子顕微鏡画像と、対照構造としてのアクチンフィラメント構造のクライオ電子顕微鏡画像を多数収集できたので、これらの画像の単粒子解析を推進してアルファ・へリックスを直接的に視認できる分解能(6-8 オングストローム)以上を達成するべく三次元像再構成を推し進める。そのためには、異なるデフォーカス量での電子顕微鏡画像の収集が必要であるので、今後は画像解析を進めつつ、電子顕微鏡画像の収集を行う。 当初の研究計画から変更する点は特にありません。
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Causes of Carryover |
液体窒素購入費として、残しておいた予算を執行したところ、予想より若干費用が少なくて済み、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の液体窒素購入費の一部として使用する予定である。
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