2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K07043
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加藤 裕教 京都大学, 生命科学研究科, 准教授 (50303847)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | シグナル伝達 / がん / 細胞運動 / リン酸化 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞運動は、がん細胞の浸潤など様々な疾患と深く関わりがあり、従って細胞の運動性を制御する仕組みを解明し、その仕組みに関わる分子をターゲットとした治療法を確立することが重要である。本研究では、これまで申請者が行ってきたRhoファミリーGタンパク質活性制御因子の制御と細胞運動に関する研究をさらに発展させ、特にがん細胞の運動性と深い関わりがあるRhoGの活性化因子、SGEFについて、その制御機構と機能についての検討を行った。 SGEFは成長因子などの下流で働くチロシンキナーゼSrcによってリン酸化を受けることを新たに発見した。SGEFがリン酸化を受ける部位はRhoGを活性化するために必要な領域内に存在していたため、SGEFのチロシンリン酸化が活性に与える影響を検討した。その結果、SGEFがSrcによってチロシンリン酸化を受けると、SGEFとRhoGとの結合が減弱し、SGEFのRhoG活性化が抑制されることを見出した。さらに、SGEFによる細胞の運動性を測定する系を確立し、SGEFがRhoGを活性化することで細胞の運動性の促進が見られ、そこへSrcの活性型を同時に発現させることでSGEFのチロシンリン酸化を促し、それによってSGEFの活性の低下、運動性の減少がこの実験系によって確認できた。以上の結果から、SGEFがSrcによりチロシンリン酸化を受けると、SGEFとRhoGの結合が抑制され、これによってRhoGの活性が減少し、細胞運動が抑制されるということを示した。これらの知見に基づくと、SrcによるSGEFのリン酸化はRhoGの過剰な活性化を抑制し、異常な細胞運動の亢進の抑制に寄与していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度からの研究実施計画としてあげていた、RhoG活性化因子SGEFの機能と制御機構の解析について、本年度までにSGEFのチロシンリン酸化による機能制御を新たに見出し、学術雑誌に論文として発表した。一方、今年度以降の研究実施計画としてあげていた、各RhoファミリーGタンパク質活性制御因子の調節機構については、SGEFがこれまでがんに対して抑制的な機能が認められるScribbleと結合することを新たに見いだし、現在その役割について解析を進めているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までの研究に引き続き、SGEFとScribbleとの結合の役割と神経膠芽腫の悪性化との関わりについて研究を進めるとともに、疾患に関連した他のRhoファミリーGタンパク質活性制御因子の機能解析についても進めていく。SGEFについては、最近になって神経膠芽腫の細胞運動性を促進しているとの報告がなされたため、SGEF とScribbleとの結合が神経膠芽腫の細胞運動性に与える影響について検討する。具体的には、結合部位を同定することでそれぞれの結合欠失各変異体を作成して神経膠芽腫細胞に発現させ、トラスウェルを利用した浸潤アッセイにより細胞の浸潤性へのリン酸化の影響を調べる。また、どのような細胞外因子によってSGEFの活性が制御されているかについて、Scribbleとの結合の制御に関わるシグナル分子を含めてその全容の解明を目指す。一方、他のRhoファミリーGタンパク質活性制御因子については、これまで疾患との関わりが報告されているものについての発現部位の同定や、各分子の発現組織由来の細胞における細胞運動性への影響を検討する。
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