2016 Fiscal Year Research-status Report
基底膜の動態と局在を制御する遺伝子の同定と分子機構の解明
Project/Area Number |
15K07063
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
伊原 伸治 国立遺伝学研究所, 構造遺伝学研究センター, 助教 (70373272)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 基底膜 / GPIアンカー |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞外マトリックスの一つである基底膜は進化的に保存されたタンパク質群から構成されたシート状の構造をしており、細胞極性の維持や代謝を制御しています。また基底膜の恒常性は厳密に制御されており、破綻は疾患を引き起こします。例えばIV型コラーゲンの変異は、アルポート症候群と呼ばれる腎不全を引き起こし、基底膜タンパク質への自己免疫疾患として、グッドパスチャー症候群などが知られています。モデル生物である線虫C. elegansは分子イメージングが容易であり、基底膜をライブ観察することが可能です。これまでに、この実験モデルを用いて基底膜動態に異常を示す変異体の探索を行い、多数の変異体を確立しました。一つの変異体の変異遺伝子を同定したところ、GPIアンカーの修飾に関わるpigN遺伝子の変異である事を明らかにしました。pigN遺伝子は、GPIアンカーの基本骨格のマンノースにエタノールアミンを転移する働きが知られていますが、基底膜タンパク質の動態に関与することはこれまで報告されていません。また、ヒトではpigN遺伝子変異によりMCAHS1症候群とよばれる重篤な遺伝病(幼児期に死亡)を引き起こすことが報告されています。これまでに線虫C. elegansとヒト培養細胞を用いて解析を行い、pigNには従来知られているGPIアンカーへの修飾機能とは異なる機能があること(Non-canonicalと定義)を明らかにしました。この知見はpigN遺伝子変異により引き起こされるMCAHS1症候群の病態を理解するための知見になると考えています。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通りに、変異体の変異遺伝子の同定及び機能解析を行い、論文を提出した。
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Strategy for Future Research Activity |
基底膜タンパク質の動態異常を示す変異体に関する最初の論文を提出できたので、今後は残りの変異体の解析を行い、順次論文提出を目指す予定である。あわせて、異なる基底膜タンパク質に注目して、基底膜の動態以上を示す新規変異体の獲得を目指す。
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