2017 Fiscal Year Research-status Report
胚発生de novoメチル化におけるDNMT3作用機序と標的調節
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15K07065
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
岡野 正樹 熊本大学, 発生医学研究所, 准教授 (50360863)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | エピジェネティクス / DNAメチル化 / ES細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
DNAメチル化酵素Dnmt3ファミリーは、ゲノムDNAにあらたなメチル化修飾を形成する過程、de novo DNAメチル化の中心的な制御因子である。本研究は、マウスES細胞を実験系とし、Dnmt3ファミリー間の相互作用に着目してde novo DNAメチル化の作用機序を明らかにすることを目的とする。本年度は、昨年度に引き続き、DNAメチル化酵素多重変異ES細胞に、野生型あるいは酵素活性を欠損させたDnmt3関連タンパク質(Dnmt3a/Dnmt3b/Dnmt3l)を組み合わせて発現するレスキュー細胞株を作製し、これら細胞株の遺伝子・反復配列におけるゲノムDNAメチル化状態を解析した。Dnmt3関連タンパク質は互いにホモあるいはヘテロ4量体を形成することによって、酵素活性非依存的に、複合体を形成する他のDnmt3の酵素活性を調節する「アクセサリー機能」をもつことが知られている。本実験系が、各Dnmt3ファミリーのアクセサリー機能の違いを評価する系として動作しうることを示す結果が得られている。一方、解析の過程で、樹立してきたES細胞株について、一部のDnmt3関連タンパク質の機能欠損が不完全であることが判明し、得られた結果から明確な結論を導きにくい問題点も明らかになった。そのため、Dnmt3関連タンパク質の機能を完全に欠損した細胞株を作製するなど実験系の修正を行っている。平行して、Dnmt3関連タンパク質を組み合わせて発現するES細胞の性質を短期間で検証できるようにするため、複数の外来発現遺伝子が導入された細胞を株化せずに分離・選択できる発現ベクターを構築、これらがES細胞で動作することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Dnmt3関連タンパク質群によるDNAメチル化修飾のゲノム分布解析の条件検討のため、主要なDnmt3関連タンパク質の機能を欠損させた多重変異細胞を用いて解析したところ、当初の予想に反し、関連タンパク質のひとつDnmt3lの機能が部分的に残存することが判明した。このため、Dnmt3l遺伝子除去方法を見直し、改変した多重変異ES細胞を作製するなど、実験系を一部修正する必要が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
Dnmt3関連タンパク質の機能を完全に欠損する改変Dnmt多重変異ES細胞を作製し、29年度に作製した新規発現ベクター系と組み合わせた修正実験系を構築する。29年度と同様のDnmt3レスキュー実験をおこない、従前の実験系の結果と比較・検証する。これらの結果にもとづいて適切な実験系を選択し、Dnmt3レスキュー細胞のゲノムワイドなDNAメチル化解析を実施する。この解析を通じて各Dnmt3ファミリータンパク質の性質を、とくにアクセサリー機能に焦点をあて評価する。同様のゲノムワイドなDNAメチル化解析を、すでに採取しているDnmt3変異マウス胎仔組織について実施、ES細胞実験系から得られた結果と比較する。これによって、培養細胞モデルを用いた作用機序解析の結果を、実際の生体内における生理的な調節・機能と関連づける。
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Causes of Carryover |
予定していた高速シークエンサーを用いるゲノム解析について、実験系の一部を修正する必要が生じた。そのため、修正実験系を構築の上、次年度に当該するゲノム解析を実施する。
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